AppleのFBI捜査協力拒否について

      2017/03/09

iPhoneでおなじみのアップル社が、米連邦捜査局(FBI)と情報開示に関して米国の法廷で争っていたのをご存知でしょうか?日本でのテロを未然に防いだり、テロが発生した後の捜査をスムーズに行ったりする場合に影響しうる話なので、この場でこの問題を整理したいと思います。

結論としては、日本では自動消去機能と入力遅延機能がついた情報端末を発売できないようにする法律を定めるべきだと私は考えます。この結論に至るまでの背景や理由についてこれから説明していきます。

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目次

 アップルとFBIの争いとは?

2015年12月、カリフォルニア州サン・バーナディーノで14名が殺害されるという銃乱射テロが起きました。事件の容疑者であるサイード・リズワン・ファルーク氏のiPhoneにかけられていたロックを、FBIが捜査のために解除するようアップル社に求めたのですが、同社はそれを拒否しました。

このiPhoneにかけられていたロックは、間違ったパスワードを10回入力するとデータが消去されてしまう仕組みになっていました。そのため、iPhoneの基本ソフト(OS)に手を加えて裏口から情報を取り出すソフトを開発しなければならなかったためFBIがこのようなロック解除の要請をアップル社に行ったというものです。

 アップル社の主張

FBIによるロック解除の要請は国の安全を守るために行われたものですが、アップル社のクックCEOは顧客のプライバシー権を理由の一つとして、この要請を断っています。

これを理由にFBIのロック解除を断ることは正しい判断なのでしょうか?そもそもプライバシー権を主張するほどのデータが携帯に保存されているのでしょうか?友達とのメールのやり取りや、旅行先の画像データ等が入っているというのが通常ではないでしょうか?

アップル社がこういった個人のプライバシーを守るためにテロ捜査の協力を拒んでいるというのであれば、その考えに私は賛成できません。

 アップル社の思惑

一説によれば、アップル社がFBIのロック解除要請を断っているのは次のような理由だと言われています。

アップルはライバルであるAndroid端末に対し、セキュリティーの高さを売り物にしてきたため、セキュリティー解除の仕組みを作ってしまうと顧客からの信用を失いかねないという説です。

iPhoneが普及する前のことですが、欧米では多くの人がBlackBerry(RIM社の製品)を利用していました。BlackBerryはセキュリティーも高く、テロリストも使っていました。そこで、各国政府はRIM社に対してテロリストが使っているBlackBerryの情報について開示する協力要請がなされ、RIM社はそれにこたえました。このことがひとつのきっかけとして、RIM社からセキュリティーの高さを求める法人顧客離れが起きたと言われています。

アップルはこのような先例があるため、法人顧客を失うことを恐れてFBIからのロック解除要請を断っているという説があります。

 

アップル社の正当性

上記の説が正しかった場合、アップルがFBIの要請を断ることについて誰も非難はできないのではないかと思います。民間企業は政府機関とは違い、利益を上げなければならないからです。政府からアップルが被る将来の損失を補てんされない限りは、アップルに対して今回のようなFBIからの要請を受けるよう強制できません。

一方で、テロなどの犯罪にiPhoneが悪用されることは避けるべきだと私は考えます。

仮に、みなさんの家族が殺人の被害者になったとして、その家族が持っていたiPhoneにロックがかかっていた場合、容疑者の情報を得るためにその家族が使っていた携帯のロックを解除する方法があった方が良いと思いませんか?

仮に、みなさんの家族が自爆テロの被害にあった場合に、テロの容疑者が持っていたiPhoneのロックを解除し、テロの首謀者やその他関係者の情報を入手できた方が良いと思いませんか?

では、どのような方法をとれば、民間企業の利益を損なうことなく、犯罪で悪用されるのを防ぐことが出来るのでしょうか?

犯罪防止に向けたアイデア

日本では、自動消去機能(パスワードの入力を何度か間違うと、中のデータが自動消去される機能)と入力遅延機能(パスワードの入力を間違うとしばらくの間パスワードの入力が出来なくなる機能)がついた携帯を販売できないようにする法律を定めれば良いのではないかと考えます。

携帯の開発をしている民間企業にとってみれば、皆が同じ条件で競争することになるので公平感があります。さらに、捜査当局からしてみると、自動消去機能や入力遅延機能が無ければ、時間をかければロックを解除できるため犯罪で悪用されることも防げます。

上記アイデアは、FBIが連邦地裁を通じでアップルに対して請求した内容とほぼ同一ですが、既に出回っている携帯について上記のような要請をするのは難しいのではないでしょうか。一方で、今後発売される携帯については、新しい法律を作れば企業はそれに従わざるを得ません。アメリカのような事件が発生する前に、日本で対策を講じておくべきというのが私の考えです。

 もしもの時の備えとして

アメリカで起こった今回の騒動は、日本も他人事では済まされません。将来、日本でテロや大きな犯罪が起こったとして、iPhoneが悪用されることも当然考えられます。そのような犯罪を未然に防いだり、犯罪が起こった後の捜査をよりスムーズに行ったりするためにも、アメリカの教訓を生かすべきだと思います。

日本で同様の問題が起こる前に、新たな犯罪を抑制する仕組みが整うことを願っています。

 - 経済

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