一票の格差とは?みんなが納得できる選挙の方法は?

      2018/03/29

「1票の格差」の問題を巡り、2015年11月25日に最高裁で「違憲」との判断が示されました。

また、2016年1月、衆議院の議席配分においてアダムズ方式を採用することが決定されており、一票の格差是正に向けた取り組みがなされています。

そもそも、「1票の格差」の問題の本質は何で、どのような選挙制度をとれば良いのかを考えてみたいと思います。

結論からいうと、若い人ほどより多くの投票権を持つ選挙制度をとることを提案したいと思います。具体的には、20代は一人5票、30代は4票、40代は3票、50代は2票、60代以上は1票の投票権が得られる制度を考えています。この制度が今の制度よりも良いと思う理由についてこれから順を追って説明します。

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目次

「1票の格差」とは

「1票の格差」とは、ざっくり言うと国会議員等の選挙で、人口の多い地域と少ない地域の1票の価値に差があるということです。例えば、100人が住んでいる地域で議員が1人選ばれる地域と、50人が住んでいる地域で議員が1人選ばれる場合とでは、後者の方が1票の価値が2倍あるということです。そして、憲法第14条に、「国民は平等である」という定めがあり、1票の格差はこの平等という法律に反するというものです。

ここで私は疑問に感じることがあります。選挙区を調整して1票の格差を調整すれば、もっと日本は良くなるのでしょうか?

 

国の借金が増え続けることは「平等」といえるか?

1990年度末から2014年度末までの20年間で、国債の残高は207兆円から778兆円と約570兆円増えています。(出典:財務省 公債残高の累増)

2014年度の税収は約54兆円なので、国の借金は約14年分の税収に相当します。これを日本の平均的な家計で例えると次のようになります。世帯収入の平均は530万円ですので、このような家族が7,400万円(=530万円×14年)もの借金を背負っていることになります。どう考えても国は借金を増やしすぎていると言えます。そしてこの借金は、将来子供たちが負担することになります。借金をすることで社会保障等の費用をまかない、未来に借金を残すことが続いています。言い換えると、国が借金を増やすことで、年寄が得をして若者が損をしている状況になっています。このようなことを続けてしまうと、国の財政が破たんすることは明らかです。

国の借金が増えているということは、世代間格差が広がっているとも言えます。果たしてこれが「国民は平等である」と言えるのでしょうか?

 

理想的な選挙制度は?

このような国の借金が増えていることはこれまで国会議員が長期的な観点で政策を実施してこなかったからといえます。では、長期的な観点で政策を実行できるようにするにはどのような選挙制度を実施すればよいのでしょうか?

(1)学者が政策を決定する

一番理想的な方法は、経済学者や政治学者のような名高い学者たちが協議して政策を決定する方法だと思います。最適な政策を決定するにはかなり高度な知識が必要となります。例えば、最適な税金の取り方をするには誰からいくら徴収すれば良いでしょうか?所得税は何%が最適でしょうか?高くすればその分金持ちは海外に逃げてしまいますし、低くしすぎれば税収が足りなくなってしまいます。法人税も同様のことが言えます。

どの水準が最適なのかはマクロ経済学、統計学、他国の状況等様々な知識や知見が必要になります。このような膨大な知識等が必要なため、学者が政策決定を行うことが最適だと考えます。しかし、この場合、少数の学者に権力が集中してしまうことになるため、独裁政治になる危険をはらんでいるため、現実の世界では少数の学者が政策を決定するという制度は取りえないと言えます。

 (2)試験に合格した人に投票権が与えられる制度

学者が政策を決定する場合、少数の人間に権力が集中し過ぎてしまうことが問題となってしまいます。では、次善の策として、政策決定に必要な知識を問う試験を実施し、それに合格した人だけに選挙権を与えるという制度は如何でしょうか?

選挙に出馬する政治家は、政治や経済に深い知識を持っている有権者に対して自分に投票してもらうべくアピールするようになります。その結果、日和見主義的な政策をアピールしている政治家等は票を獲得することが出来ず淘汰されることになります。

学者が政策を決定する制度には及ばないものの、比較的長い視点に立った政策を実施できるようになるのではないかと思います。

この制度の問題点は、試験の難易度をどのくらいに設定するべきか、どのくらいの頻度で試験を実施するべきか、受験者のうち何%の人を合格させるべきか等があります。あまり難しくし過ぎると学者の事例とどうようで、少数の人に権力が集中し過ぎるという問題が生じます。一方、多くの合格者を出し過ぎると、そもそもこの制度を採用する意味が無くなってしまいます。

このような理由から、結局は試験によって選挙権を与える制度を実際に導入するのは難しいと思います。

(3)納税額に比例して投票権が得られる制度

学者であったり、試験に合格した人が政策を決めたり選挙権を持ったりすると、弊害があり現実的ではないとなれば、どのような選挙制度を採用すれば私たちは納得感が得られるでしょうか?

一つのやり方としては、国に貢献している度合いに応じて選挙権を与えるという方法が考えられます。具体的には、納税を多く収めていればそれだけ多くの選挙権を与えるという方法です。この方法の良いところは資本主義の考え方に近く、お金を出した人がそれに応じて得をするため平等だったり納得感が得られやすかったりする点です。国民は税金を納めます。そして、その納められた税金は国会議員が色々と話し合ってその使い道が決められます。お金を多く払った人が、その分多くのメリットが得られるような政策が採用されることになるため、皆にとって納得感があると考えられます。

一方で、この方法のデメリットとしては、税金を多く納めることができる金持ちを優遇する社会になってしまう点です。国が国として機能するためには、所得の低い人を手助けする仕組みがないと成り立ちません。所得の人口分布図を見てもそれは明らかだと思いますが、この点についてはまた別の機会に触れたいと思います。

いずれにせよ、納税額に比例して投票権が得られる制度は、現在の社会の構造上取り得ない選択肢となっています(ただし、科学技術が発達し、全ての人が豊かな生活をできる世界が訪れたときは、納税額に比例した投票権が得られる制度は一番有効だと思います)。

(4)1人1票の投票権を得られる制度

さて、これまで「学者が政策を決定」、「試験に合格した人が投票権を得る」、「納税額に比例して投票権を得る」とった方法は現在の社会では取り得ない選択肢だということを述べてきました。では、今の日本で採用されている1人1票の投票権が得られる制度はベストな方法なのでしょうか?もっと良い選挙の方法はないのでしょうか?

1人1票の権利が与えられている現在の選挙制度の良いところは、「現在多くの国で採用されている制度であり、この制度が平等であると感じる人が多いため、納得感がある」ということではないでしょうか。しかし、「納得感がある」ことと、「国の政策が長期的な視点で正しく決定される」ことは異なります。

今の日本は少子高齢化が進んでいます。そして、政治家も多くの票が得られる高齢者にとって望ましい政策を進める傾向が見られます。このテーマの冒頭で述べましたが、1990年度末から2014年度末までの20年間で、国債の残高は207兆円から778兆円と約570兆円増えています。言い換えると世代間格差が生じています。あえて過激な言い方をすれば、孫に借金をさせておじいちゃんやおばあちゃんが生活しているとも言えます。別の言い方をすれば、短期的な利益を求めた政策を実施し、長期的な視点での政策が実施できていないとも言えます。

では、どうすればこのような問題を解決することができるのでしょうか?良く巷では若者の選挙離れが言われています。もちろん若者が選挙に行けば政治家も長期的な視点での政策を実施しやすくなります。しかし、日本の人口構成が少子高齢化になっている以上、高齢者優遇の短期的な視点での政策に重点を置いてしまうことは若者が選挙に参加しても回避できないと言えます。そこで、私は次のような選挙制度を提案します。

(5)若い人ほどより多くの投票権を得られる制度

現在、採用されている日本の選挙制度では、1人1票の投票権を有しています。憲法第14条にも「国民は平等である」という定めがあり、この定めに従って採用された制度だと言えます。しかし、前述したように、今の日本の人口構成では高齢者の意見がより強く反映されており、国債残高の増加や短期的な視点での政策を優先してしまうという弊害が生じています。「保育園落ちた。日本死ね」という匿名の書き込みがネットにされたのも記憶に新しいところです。

では、今よりももっと良い選挙制度はないのでしょうか?私は、若い人ほどより多くの投票権を得られる制度を提案します。具体的には、20代(18歳以上)は一人5票、30代は4票、40代は3票、50代は2票、60代以上は1票の投票権が得られる制度です。この制度は、年代毎に投票権の格差が生じますが、全ての人に年齢という基準で票が与えられるため、平等と言えます。つまり、憲法(あるいは憲法の趣旨)にも違反しないと言えます。

新選挙制度のメリット

この方法を採用した場合のメリットとしては、政治家が長期的な視点での政策を実施せざるを得なくなるというところにあります。若者は将来高齢者になります。そのため、政治家が若者のみを優遇するような短絡的な政策を打ち出してくると、それは若者からも支持されないと考えられます。つまり、真に長期的な視点での政策を打ち出すことが政治家に求められるようになります。

このように若者に多くの投票権が与えられれば、例え短期的な問題解決のために国債発行額が増えたとしても、それを将来背負う若者からの支持されたうえで実施された政策であれば納得感があります。

また、高齢者の社会保障が薄くなるのに応じて、子育て等をしている若い世代の社会保障が手厚くなることが想定されます。高齢者の面倒を見ているのはその子供や孫であることが多いため、世帯全体で見ると国からの支援総額は変わらないことになります。むしろ、長期的な視点での政策を厳しく評価されるため、国民から集められた税金を、今よりも効果的に使うことが出来、その結果、国からの支援総額は変わらないどころか実質的に増額となることも期待できます。

新選挙制度のデメリット

尚、若者により多くの投票権を与える制度を導入することで、実質的に損失を被るのは子供や孫に恵まれなかった高齢者ということになります。この点についてはどう考えるべきでしょうか?

子供が大人になるまで育てるには一説によると一人当たり約2,000万円かかると言われています。さらに、子供を産むと育休や産休に入らざるを得ないため、両親のどちらか一方はフルタイムの仕事をバリバリこなすことは難しくなります。家賃の面でも、夫婦二人が1LDKや2LDKに住む場合と、家族4人が3LDKや4LDKに住む場合とではかかる費用が大きく異なります。これらのことから、夫婦2人のみの高齢者と子供2人を育てた高齢者とでは、少なく見積もっても4,000万円以上の開きが貯蓄に生じます。

周囲の人よりも4,000万円多い貯蓄のある人に対する国からの支援を減らし、若い子育て世帯の支援を増やすことは多くの人にとって納得感のある政策だと私は考えます。

これまで述べてきた選挙制度の方法とそのメリット/デメリットをまとめると以下の表のようになります。

私は、日本を今よりも少しでも良い国にしたいと心の底から願っています。良い国にするために色々考え、思いついた方法の一つが「若い人ほどより多くの投票権を得られる制度」の導入です。

このブログを読んでくださった方々には、是非この新しい選挙制度のアイデアを広めて欲しいと願っています。そして、より多くの人が議論を重ねることでもっと良い選挙制度のアイデアが出てきたり、今の日本が抱えている問題について解決が進むことを願っています。

選挙制度/政策決定方法 メリット デメリット
学者が政策を決定する 最適な政策を実行できる 少数の人が大きな権限を持ってしまうため、独裁政治になる危険をはらんでいる
試験に合格した人に投票権が与えられる制度 学者が政策を決定する制度には及ばないが、比較的最適な政策を実行できる 受験者のうち、何%の人を合格させるべきかという問題をはらんでいる(どこで線引きをすべきかの議論が常につきまとう)
納税額に比例して投票権が得られる制度 国への貢献度合い(=納税額)が多ければ、より多くの権利が与えられるため、平等な制度といえる 金持ち優遇政策が取られるリスクをはらんでいる
1人1票の投票権を得られる制度 現在多くの国で採用されている制度であり、この制度が平等であると感じる人が多いため、納得感がある 現在の日本では、高齢者の投票率が高く且つ人口構成比でも高い割合を占めているため、政治家が票を集めるために高齢者を優遇する政策(=短期的な視点に則った政策)をとってしまう
若い人ほどより多くの投票権を得られる制度 若者の投票権が多くなり、政治家が若者を優遇する政策(=長期的な視点に則った政策)をとれる 子供のいない高齢者にとっては現在の制度と比べて不利益を被る

 

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