東京メトロと都営地下鉄の一元化に向けた議論の考察

      2017/03/08

この投稿では、東京メトロと都営地下鉄の経営の一元化について議論がされていた「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」で公開されている全発言要旨について、論理的に正しいことを主張しているのかどうかについて分析することを試みています。そして、それぞれの立場の方々が果たすべき役割を全うできているのかを見ていきたいと思います。

結論としては、論理的に間違った主張をしている部分もあるが、省庁や東京都等はそれぞれの立場を全うしている。そのため部分最適になっており、国民全体にとってみると望ましい方向性に議論が向かっていない、ということが言えそうです。

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目次

東京メトロと都営地下鉄の一元化に向けたこれまでの経緯

都営地下鉄は東京都が管理/運営しています。そして、東京都は東京メトロの46.6%の株式も保有しています。

一方で、財務省は東京メトロの残りの株式53.4%を保有しています。

同じ都心という場所でメトロと都営という二つの組織が別々に地下鉄を運営しているため、運営が非効率になっている部分があることが指摘されています。

そこで、東京都は都営とメトロの経営を一元化することを提案してきました(経営の一元化とは、簡単に言い換えると合併するという意味です)。

現在、東京メトロは民営化させるため上場に向けて準備を進めており、上場させてしまうと株主総会で決議が得られ辛くなり経営を一元化させることがとても難しくなってしまいます。

東京メトロと都営地下鉄の一元化は、2010年の石原慎太郎が都知事を務めていた時にプロジェクトチームが発足し、「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が2010年8月~2011年2月にかけて計4回開催されました。

この協議会には、東京都、国土交通省、財務省、東京メトロの4者が参加し、一元化に関する議論を重ねました。

 

その後、「東京の地下鉄の運営改革会議」が2013年7月と2014年1月で計2回開催されました。この会議には東京都、国土交通省、東京メトロの3社が参加し、サービスの一元化に関する議論を重ねました。しかし、2010年から4回開催された協議会とは異なり、経営の一元化に関する議論は議事録を見る限りではなされていません。

 

2013年1月には、猪瀬都知事が東京の地下鉄の一元化への協力を求めるため太田国土交通大臣と面会しており、その時に使用された資料では、都営地下鉄と東京メトロの経営の一元化についての協力を仰いでいます。

 

東京の地下鉄の一元化等に関する協議会でなされた議論

協議会では、東京都、国土交通省、財務省、東京メトロの4者それぞれが、どういった主張をしているのかの発言要旨が公開されています。

そこで、各発言について論理的に間違っていると考えられる点について、考察してみたいと思います。

尚、この発言要旨については東京都都市整備局のウェブサイトで公開されているので、そちらをご覧頂ければと存じます。

 

発言要旨の引用はそのまま箇条書きにしてあり、私の考察は赤色の文字で記しています。

 

「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」の発言要旨

東京都

  • 通勤地獄等に速やかに対応するために二元化して地下鉄を建設してきた。今後は、大規模な建設は無く、運営が中心となる。たま、東京メトロ法制定時と比較し、現在、都営地下鉄の経営は改善されていることから、一元化を議論するのに良いタイミング。法律に規定はあるものの、株を売ってしまったら一元化は出来ないので、今が東京の地下鉄を一つにする最後のチャンス
  • 都営とメトロが一緒になれば、より効率的な経営を行って、税金を早く返すことができ、利用者サービスの向上に繋がる投資を行うことも可能
  • 初期投資の回収に時間がかかるのはインフラ型産業の特徴であり、回収が終わって、利益を積み上げるだけのメトロと、まだ終わっていない都営とでは、財務業況に差が生じるのは当然。利用者サービス向上のために経営統合する場合、メトロが上場して民営化してしまうと、それが不可能となる
  • メトロの子会社は、41人中39人の役員をメトロOB・出向者で占め、高い報酬を得て閉鎖的な経営をしており、問題
    • 民間企業では子会社の役員を親会社から派遣するのは普通に行われる。子会社という別会社ではなく親会社の中にある一部門という組織であれば、上記の出向というやり方は、単なる社内の人事異動という話になる。グループ企業としての利害は親子企業で一致しており、少数株主がいないのであれば閉鎖的な経営という評価は論理的に間違っている。「閉鎖的な経営」を止めるために、子会社が親会社ではなく第三者の利益を優先するようなことがあれば、その子会社の経営陣は善管注意義務違反として株主である東京メトロに責任追及をされることとなる
  • メトロは新線建設もしておらず、ただ利益をため込むだけの会社になっている。税金を投入して整備したインフラで得た利益を、子会社のビル経営などに使うことは問題
    • 子会社のビル経営がメトロ社員向けサービスとして行われ、且つ福利厚生といえる範囲を超えているのであればこの主張は正しいことになる。そうでなければ東京メトロの反論の方が理にかなっていると考えられる
  • 東京メトロは、有楽町線沿いに学生専用のワンルームマンション、また、外苑西通りに青山エムズタワーという25階建のホテル兼マンションを建てているが、売ってバリアフリーに返すべき。5,400億円の公的資金が投入されてきた公共性を前提とした地下鉄が今やっていることは何なのか
  • 長期債務を収益の3倍以内に抑えるべきという基準について、その根拠を説明してほしい
  • 国が示した長期債務は営業収益の3倍以内に抑えるべきという、いわゆる3倍基準は、鉄道収益だけでこの基準を達成できているのは東京メトロだけであり、あまり意味がない
  • 東京メトロと都営地下鉄の減価償却費を控除した営業係数(100円の収入を得るために要する費用を示した数字)を試算すると、都営地下鉄が東京メトロに勝っている。
  • 都営地下鉄は長期債務を確実に償還しており、10年後の債務残高は5,000億円台に圧縮することが可能
  • 都営地下鉄の財務状況は、公営企業会計上問題ないが、国際会計基準(IFRS)公正価値を反映した試算でも、健全でポジティブである。一元化は財務的に支障がない
  • 東京メトロは段差解消駅が66%、車椅子対応トイレ設置駅が82%でバリアフリー対策が遅れており、混雑率も一部で非常に高い。2,000億円の利益剰余金があるのだから、バリアフリー投資や混雑解消に取り組むべき
  • 九段下駅ホームの壁の問題は、一元化の中で二元的運営によって生じた不合理な例として東京都が取り上げたものである。九段下の壁について話し合いたいなら、一元化を前提とすることが必要
  • 現在の株式価値を評価しても仕方がない。将来どうなるのかが重要である
    • 「将来どうなるか」という発言の意図は議事録からは読み取れないが、将来「どのように効率的な運営がされるのか」はとても重要
    • 一方で、経営の一元化を考える際、既存株主がどれだけ持ち分を維持できるかが決まるため、メトロと都営の株式価値を評価するのはとても重要
  • 今、株をいかに高く売るかということではなく、利用者目線に立って一元化の議論を進めるべきである
  • 東京メトロの株式上場を見送り、メトロと都営の一元化の議論を優先させるべき
  • 東京の地下鉄の一元化の歴史は、戦時下での帝都交通営団の設立による二元的経営の最初の一元化があり、第二の波が戦後復興期の1958年に地下鉄建設への東京都の参入であった。そして2006年度、都営が単年度黒字を達成し、急速に経営状況を改善させている現在、第三の波の前に、一元化を推進する時期が来ている
  • 1956年の都市交通審議会答申第1号が「地下高速鉄道網の迅速増強のための経営主体の整備」という理念で意図するところは、将来の経営の一元化そのものであって、運賃の一元化ではない
  • 都営地下鉄の財務状況は、第三回協議会で示した通り健全でポジティブであり、長期債務が多いため一元化が困難というような問題はない
  • 現在のままの二元的な運営では、サービス改善は各々の収益の範囲内でしか行えず、利用者への利益還元には経営の一元化がベストである
  • 今後も一元化の協議が続くということを前提に、サービスの改善は可能なものから早急に取り組んでいくべきであり、「九段下駅ホーム等の壁の撤去」、「改札通過サービス」、「乗換駅の追加指定」について提案する
  • サービス改善策について、今後東京メトロと様々な対策を幅広く検討し、費用対効果、運賃制度との整合性、経営に対する影響、費用負担等を考慮した上で、可能なものから順次実施していきたい
  • 運賃の乗換負担軽減策については、議論の対象にはなっていくものだと思っているが、いろいろな面から検討して、その上で判断していくべき
  • 先日、ソフトバンクの孫氏と、都営地下鉄トンネル内の携帯電話利用環境整備について年内に主要路線すべてで実施したいと話をした。メトロも目標の期限を示すべきである

 

国土交通省

  • 東京メトロの民営化は、昭和61年の行革審答申から言われている方針。また、メトロは優良会社であることは事実。現下の株式市況の状況を別とすれば、財務面では上場に懸念はない。東京メトロは投資や配当も行いつつ、その中で債務を償還しているところ。いずれにしても、利用者利便の向上の観点から、地下鉄一元化について、完全民営化を踏まえて議論を行っていきたい
  • メトロの利益剰余金は、輸送力増強や安全対策などの設備投資や債務削減に使われており、利用者に適切に還元する形が出来ていると考えている
  • メトロの株式を持っている国の立場としては、国民の財産であるメトロの株式の価値が下がらないようにやっていかなければならない
    • 国の立場としては、「東京メトロの株式の価値」だけを考えるのでは不十分。都営地下鉄を主に利用する東京都民も国民であり、国民の生活向上に資することを考える立場にあるのが国土交通省であると私は考えます
    • 国土交通省としては、メトロの株式価値だけでなく、債権者、従業員、利用者のことも考慮した政策を実施する立場にあります。これと同様に、都営地下鉄のステークホルダーのことも考慮した政策を実施する立場にあると考えられます
  • 今後議論を深めていくために、都営の長期債務、累積欠損を具体的にどのように処理するつもりなのか聞きたい
  • 利用者サービス向上の観点から、乗継割引の拡大などについてどう考えているのか、都営、メトロ双方に回答してほしい
  • 東京メトロと都営地下鉄の経営統合のためには国民の共有財産である東京メトロの株式価値を毀損しないことが基本。長期債務は収益の3倍以内に抑えるべきといういわゆる「3倍基準」は、都営の財務状況改善の一つの目安として示したものであり、認可基準という性格のものではないが、都営の長期債務は事実として多く、都営の債務圧縮が必要という基本スタンスに変更はない
  • 証券会社3社による収益力ベースの試算では、都営地下鉄の株式価値はマイナスで、東京メトロはプラスである。現状では、都営地下鉄と経営の一元化は東京メトロの株式価値を毀損する
  • 第3回協議会の国土交通省提出資料にあるように、現状の都営地下鉄の株式価値はマイナスであり、現状での経営一元化は国民の財産である東京メトロの株式価値を毀損するもの
    • 仮に都営地下鉄の株式価値がマイナスであることが正しければ、この議論は正しい
    • 一方で、都営がDES(デット・エクイティ・スワップ)を行えば株式価値は直ちにプラスに出来る。そうすればメトロの株式価値を毀損させることなく経営の一元化が可能。こういった議論をせずに経営の一元化を否定するのは国民の利便性向上という役割を担っている国土交通省としてはいかがなものか
    • DES以外に、東京都が都営の増資を引き受け、そのお金で負債の返済をしても同じ効果が得られる。債権者が債務の返済に応じない場合、増資で得られた現金をそのまま持っていても、株式価値の評価としてはDESと同様の効果が得られる
    • 例えば、メトロの株式価値が9,000億円で、都営の株式価値が1,000億円だったとする。この2社が合併して出来た会社の株式持分は、メトロの株主が90%、都営の株主が10%持つことになる
    • メトロの株式価値が9,000億円で、都営の株式価値が-1,000億円だったとする。この2社が合併して出来た会社の株式持分は、メトロの株主が100%、都営の株主が0%持つことになる。さらに合併後の株式価値は8,000億円になってしまうので、メトロの株主とすれば合併によって損をしたことになる
    • 言い換えると、都営の株式価値をDES等でプラスにさえすれば、合併比率の調整によりメトロの株式価値を毀損させずに合併させることが出来る
  • 現在、都営地下鉄は公営企業会計、東京メトロは企業会計をそれぞれ採用しているが、両者を共通の土俵で比較していくことも必要である
  • 東京メトロの完全民営化は法律に規定された方針である。東京都から示された都営地下鉄の長期債務や累積損失の見通しの中で、例えば東京メトロの株式配当を受け取り続けることが前提になっているが、株式売却の方針と矛盾しない見通しが必要
  • 東京メトロと都営地下鉄の、運賃の乗継負担の軽減や九段下駅等の乗継利便の向上などは、経営の一元化を前提にしなくても出来るものであり、利用者本位で、両者で具体的なサービス向上策を話し合ってもらいたい
    • 運賃を下げるにはそれ相応のコスト削減がなければならない。コスト削減せずに運賃を下げた場合、減収分は結局税金で賄われることになる。というのも、メトロも都営も国や都が全株式をもっており、2社の減収により配当等が減れば、そのしわ寄せは税収に及ぶ。これは地下鉄の利用者からお金を調達するのをやめ、国民の税金で補うということを意味する。地下鉄を利用していない国民に負担を転嫁するやり方は理にかなっているとは思えない
    • コスト削減が出来る部分としては、例えば東京メトロと都営地下鉄の乗換駅でそれぞれの改札機がある場合はそれらすべてを撤去したり、中間管理職を削減したり、電車の運営システムを一元化したりすることなどが挙げられる。こういったコスト削減は、経営の一元化を前提にしなくても実施できるのかについて議論すべき
  • 通勤者・通学者はある意味通勤や通学のプロなので、鉄道を利用していると改善すべき点に気がつくが、自分の知恵や工夫でそこを軽減して難しさを回避している。供給者側はそうしたプロである利用者に頼るのではなく、自ら色々考えて欲しいということで両事業者には話をしてきた
  • 一元化の話については、都営地下鉄の財務状況や組織形態など様々な問題があって、短時間ではなかなか実現が容易ではない
  • 今回、東京都交通局からは、運賃の乗換負担軽減策に関する資料が出されなかったが、この点も含めて、今後、東京都交通局と東京メトロで議論して頂ければと思う
  • 都営地下鉄の財務状況はトレンドとしては改善されつつあるが、東京メトロとの時間軸のズレが大きく、道半ば
  • しかしながら、毎日866万人が地下鉄を利用されており、サービスの改善は待ったなしであるので、急いでほしい

 

財務省

  • 国の交通政策との整合性を前提として、東京メトロの株式価値を高めていくことが重要。出来る限り速やかに株式売却を行うべきとする東京メトロ法(附則2条)の範囲で議論されるべき
    • 国の立場としては、「東京メトロの株式の価値」だけを考えるのでは不十分。都営地下鉄を主に利用する東京都民も国民であり、国民全体の財産のことを考慮するのが財務省の役割
    • 法律は手続きについて議論する時は重要だが、本来どうあるべきかを議論する際は各自の主張をサポートする根拠にはならない。本来あるべき姿にするために法律が弊害となるのであれば、法律自体を変えれば良いだけの話
  • 企業買収(M&A)を考える場合、長期債務については、それに見合う資産(企業価値)があるかどうかが問題となるが、累積欠損は、通常、解消すべきものではないか
    • 合併比率で調整されるため、累積欠損を解消しなくても経営の一元化は可能。債務超過は少なくとも解消する必要があるが、それはDES等の方法で対応できる
  • 東京メトロの株主の立場としては、東京メトロ株式の資産価値評価にあたって、B/S上の純資産ではなく、収益力(将来のキャッシュフロー)に着目した目線で見ている。したがって、国保有の資産価値に与える影響から都営地下鉄の財務を評価する場合には、東京メトロに対する目線と同様になる。結果として市場関係者と同様の目線であり、証券会社3社の試算にあるように、都営地下鉄の負債は企業価値を大幅に超過しており、株式価値としてはマイナスであると判断している
  • 仮にIFRSベースのB/Sで評価したとしても、鉄道事業のB/S上の資産としては構築物等の減価償却資産が太宗を占めており、これらは将来のキャッシュフローに近似するものではなく、あくまで過去の資本投下の結果に過ぎないものである
  • 株式を売却する立場からは、市場関係者の意見を踏まえて検討する必要があるが、市場関係者の見方については東京都とは異なる認識を有している。いずれにせよ、早期売却については今後も協議を続けていきたい
    • 国として資金調達をする必要性から早期売却を検討しているのであれば、まずは国債を発行し、メトロ株を売却した後にその売却資金で国債を買い戻す方法がとれる
    • 早期に売却した方が高く売れるのが仮に正しいとした場合、「都営の経営を一元化することにより見込まれる経営効率化及び利便性向上」と、「高く売れる金額」のどちらの方が国民にとって有益かを議論する必要がある

 

東京メトロ(東京地下鉄株式会社)

  • 利益剰余金はキャッシュとして積みあがっているわけではなく、事業用資産の取得と債務削減に回っている
  • 子会社についての考え方であるが、アウトソーシング系の子会社は、コストの削減を図りながら、効率性を高めつつ、鉄道の安全輸送に係る業務を担わせるということ、また、技術の社外流出を抑え、グループ内で技術力を保持するために設置している。収益系の子会社については、関連事業の専門性を高めるために、それぞれの事業にあった人材の確保育成とノウハウ蓄積のためのもの
  • 一元化そのものを否定しているわけではないが、当社の株式価値を毀損するような一元化では困る。都営地下鉄の累積欠損をどうするかということが現実の問題としてある
  • 当社は、法律上完全民営化を位置付けられている会社であり、完全民営化のためにまずは株式上場できるよう準備する立場である
  • 現行以上の利用者の乗継負担の軽減や九段下駅ホームの壁問題などのサービス向上策は、経営の一元化を前提としなくても取り組める議題であり、東京都交通局と協議していきたい
  • バリアフリー化については、銀座線・丸の内線など古い路線が多く、スペースが非常に狭いという事情がある中で最大限努力している。ホームから地上までのエレベーターによるワンルート整備に取り組み、構造上極めて整備が困難な駅を除き、今後10年間で整備率100%を目指す
  • 「サービス向上に向けた主要プロジェクト」で示したように、今後、これまで取り込んでいた新線建設への投資分も含め、東西線等の混雑緩和、銀座線のリフレッシュ、ホームドアの設置、駅・トイレの改良等お客様サービス向上のための設備投資をより積極的に行っていく
  • 不動産事業は、鉄道施設の上空や鉄道事業として使用しなくなった土地等を有効活用したものであり、確実に投資効果が認められ鉄道事業の収益を補完するものについて実施している。このような関連事業への投資は、営団地下鉄の完全民営化の方針を決定した昭和61年の臨時行政改革推進審議会答申をはじめ、民営化の前から度々の閣議決定によって、都営基盤の強化を図るために、関連事業の増収に務めることが営団地下鉄に求められてきたことから、実施しているものである
  • 利用者サービスの向上策を積極的に実行していきたいと考えている。この観点から、乗換利便性向上策として「九段下駅の改装」、「本郷三丁目駅の連絡通路等設置」、「改札通過サービス」、「乗換駅の追加指定」、また、運賃の乗換負担軽減策として「通算運賃制度の導入」や「乗り継ぎ割引の拡大」について提案する
  • 「九段下の改装」についてはホーム階に加え改札階の壁の撤去も行った方が適切と考えるので、この方向で東京都交通局と協議していきたい
  • 「本郷三丁目駅の連絡通路設置」等その他の乗換利便性向上策については、お客様の安全確保や誘導方法を考慮しつつ、東京都交通局と協議していきたい
  • 運賃の乗換負担軽減策については、システムの対応等実務上の問題点も含め東京都交通局と協議していきたい
  • 地下鉄トンネル内の携帯電話利用環境整備については、整備主体である(社)移動通信基盤整備協会に対し、再三にわたり早期整備を申し入れてきたところであり、本年1月下旬に協会と合意に至った。今後は協会が策定する整備計画を踏まえ、早期整備に向けて全面的に協力していきたい

 

4者それぞれの立場

以上が協議会で議論された発言の要旨です。

各社の発言を私が加工してしまうと恣意性が出てしまうので、全ての発言要旨をここに記載いたしましたが、簡単にまとめると以下の通りとなります。

 

東京都の立場:                 東京都民の利便性向上が一番大事。そのため、メトロと都営の経営の一元化を目指す

国土交通省の立場:          鉄道の監督権限を有する。メトロの株式価値最大化を優先。そのため、都営との経営の一元化は反対

財務省の立場:                 国有財産(東京メトロ株式)管理権限を有する。メトロの株式価値最大化を優先。そのため、都営との経営の一元化は反対

東京メトロの立場:          メトロの株式価値最大化を優先。そのため、都営との経営の一元化は反対

 

全体最適を目指す仕組み作り

この投稿をしているのは、各行政機関が部分最適を目指してしまっており、全体最適が出来てないことを理解するのに役に立つと思ったからです。

地下鉄の一元化について、国土交通省や財務省は一部論理的に間違ったことを言っているものの、概ねそれぞれの立場に則った主張が出来ていると思います(東京都も東京メトロも然り)。恐らく財務省で本件を担当している官僚の方は、国の財源として東京メトロの売却を見込んでおり、出来るだけ早期に出来るだけ高い金額で売却することを命じられているのだと思われます。

この立場からすれば、協議会でなされている主張をするのは一定の合理性があります。官僚の方も省内での人事評価を考えればそのように動かざるを得ません。

しかし、これでは部分最適になってしまい全体最適にはなりません。言い換えると、国交省や財務省としては自分たちの役割を全うできるが、国民全体にとってみれば非効率的な政策を推し進めていることになっています。

 

こういった部分最適の問題を解決するには、何かしらの仕組みを取り入れる必要がありますが、私にはその良い方法がまだ思い浮かんでいません。

省内の人事評価制度を見直す方法では、各省庁に課せられた役割分担があるため、その効果には限界があると思います。

現状では、このようなブログやマスコミ等で発信することで世論が形成され、各省庁がそういった世論を汲まざるを得なくなる状況を作るしか方法が無いと思います。

 

この投稿を読んでくださっている方の中で、良い方法を思いついたら世の中に発信して頂いたり、私にアドバイスをして頂ければ幸いです。

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