高齢者による運転は事故になる危険性が高いことの検証

      2017/03/09

高齢者による自動車運転事故が連日のように報道されるようになりました。高齢者が自動車を運転するのは危ないのではないかと感じている人は多いと思われるものの、データを使ってきちんと説明できるかと言われれば、なかなか難しいのではないでしょうか。

この投稿では、どういったデータを用いればその根拠として意味があるのかについて、考えてみたいと思います。

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目次

データ① 交通事故による年齢別死者数の推移

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出典: 内閣府 平成28年版交通安全白書 28ページ目一部抜粋

 

このデータは、交通事故で死亡した人数を高齢者と高齢者以外に分けて計算したデータです。直近では高齢者が2,247名無くなっており、事故に遭遇している高齢者の方が若い人よりも多いことが推察できます。

しかし、このデータは事故の被害者である場合が含まれている点、高齢者は若い人に比べて事故の致死率が約6倍も高い点、等の欠点があります。

つまり、高齢者による自動車の運転が危険かどうかを判断する材料としては不十分だと言えます。

 

 

データ② ドライバーの年齢別交通事故件数の推移

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出典: 警察庁 平成27年における交通事故の発生状況 18ページ目一部抜粋

 

このデータは、ドライバーの年齢別に何件交通事故を起こしたかを表すグラフです。このグラフからは、総じて若いドライバーが事故を起こしている数が多いことが読み取れます。

しかし、このデータは事故の発生件数を表しています。高齢になれば運転をする人数が減ってくることが想定されるため、高齢者の自動車運転が安全かどうかを判断する材料としては不十分だと言えます。

 

 

データ③ 免許保有者10万人当たりのドライバーの年齢別交通事故件数の推移

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出典: 警察庁 平成27年における交通事故の発生状況 17ページ目一部抜粋

 

このデータは、各年齢別で免許を持っている人10万人当たり何件の交通事故をドライバーが起こしたのかを表しています。

このグラフからは、10代や20代の事故率が高いものの、80歳以上のドライバーも比較的高い確率で運転事故を犯すことが読み取れます。

これは、10万人当たりに直して算出しているデータなので、②よりは高齢者の運転が安全かどうかの根拠を示す可能性が増したものの、まだそれを判断するには不十分だと言えます。

理由としては、高齢者になれば免許は持っていても運転しないペーパードライバーの割合が、他の年齢層よりも多いことが想定されるからです。

つまり、若い年代の事故件数が不当に高く出てしまう統計データとなっている可能性があります。

 

データ④ 高速道路の逆走に関する統計データ

  • 2011~2013年の3年間で、国内の主要高速道路で逆走をしたことが判明した数は541件
  • 541件の事例のうち、65歳以上の高齢者が運転していた件数は68%
  • 541件の事例のうち、認知症の疑いがもたれている件数は37%

出典: NEXCO東日本 「高速道路における逆走の発生状況と今後の対策について」

 

このデータでは、認知症の疑いがもたれている人が65歳以上だったかどうかのデータが開示されていないという欠点がありますが、加齢とともに認知症になる割合が増えていくことを鑑みれば、65歳以上で逆走をしていたドライバーの多くに認知症の疑いがもたれていたといことが推測されます。

仮に、認知症の疑いがあった方が全員65歳以上であった場合は、逆走した65歳以上のドライバーのうち5割以上の人(=37÷68)が認知症の疑いがもたれていたということになります。

 

このデータの欠点としては、全ての交通事故や交通違反についてのデータではなく、高速道路の逆走という一部の違反のみのデータである点が挙げられます。

しかし、高速道路の逆走という違反に限って言えば、このデータは高齢者による運転は事故になる危険性が高いことを証明する重要な根拠となると言えます。

 

どのようなデータがあればもっと正確な議論が出来るのか?

仮に、どの様なデータでも集められるとした場合、高齢者による運転は事故になる危険性が高いことの検証にはどのようなデータがあれば良いのでしょうか?

 

恐らく、全てのドライバーについて「年齢、交通違反や交通事故を起こしたかどうかやその内容、走行距離、認知症の有無」に関するデータがそろえば、きちんとした結論が出せると思われます。

というのも、年齢別に走行キロ当たり何件の事故を起こしたのかがこのデータがあれば計算できるからです。

 

しかし、年齢別にすべてのドライバーの走行距離を計算することは不可能です。そもそも、事故を起こしていない人が何キロ運転したかといった情報を年齢別で調べる方法はほぼ無いと思われます。

(もしかすると、自動車保険会社であればこのようなデータを集めることが出来るかもしれません。それに応じた新しい保険商品を作ってみるのも面白いかもしれません。)

 

次善の策としては、やはり上記のデータ④で示した高速道路の逆走に関するデータが有用だと思われます。

私としては、感覚的にも客観的なデータにおいても高齢者の運転は事故を起こす危険性が高いと考えています。

 

この投稿を通じて、もっと世の中でデータに基づいた議論が活発になることを願っています。恐らく、ロジックとして正しいデータを活用すれば、高齢者の運転は事故を起こす危険性が高いと言う結論になる事例が多く出てくると思います。そして、高齢者の運転による事故を減らす動きが活発化することを期待しています。

 

尚、高齢者による自動車事故を減らすアイデアについては、以下の投稿で説明しています。興味のある方はこちらも是非ご覧ください。

高齢者による自動車事故を減らすアイデア

 

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