舛添氏が都知事を辞任。選挙費用は誰が負担すべきか?
2017/03/09
これまで、連日のように舛添氏の公費私的流用疑惑に関する報道がなされてきましたが、ついに辞任することとなりました。そのため、50億円の税金を使って都知事選挙をする運びとなりました。この選挙費用は本来誰が負担すべきなのでしょうか?
私は、(1)辞任することになった責任を負っている人、または(2)辞任することでメリットを享受できる人、が負担をするのが本来あるべき姿だと考えます。
では、それは具体的に誰のことなのかについて順を追って説明していきます。
目次
辞任よりも無休で続投が最善の選択肢
私が以前投稿した記事で、舛添氏が無休で任期をまっとうするのが皆にとって最善の選択肢であるということを説明しました。
詳しくはその投稿を見ていただきたいのですが、最善の選択肢になっている理由を簡単にまとめると以下の通りとなります。
- 舛添氏が無休で2年間働くことで、実質的には4,000万円を国に返済することになる
- 無給で働くことに加え、2年間ただ働きをするという制裁を受けることになる
- こういった負担を舛添氏が負うことになるため、都民の感情論としても一定の理解が得られる
- 舛添氏が辞任した場合は、追加で25億円のお金(選挙費用)がかかってしまう
無駄遣いされた税金の額は?
都知事選挙には約50億円がかかると言われています。
「たとえ50億円かかったとしても、都知事の任期が2年後だったのでそれが早まっただけ。無駄に選挙費用はかかっていない」という感覚でいる方が多いように感じます。しかし、実際には50億円かけて4年間働く知事を選んでいるので、知事が2年間で辞めてしまっては25億円を無駄にしたことになります。
もっとわかりやすい例でいうと、2年毎に都知事選をする場合と、4年毎に都知事選をする場合とでは、前者の方が2倍の費用がかかることになります。
実質的には25億円の追加出資になっているということを、マスコミでも報じて欲しいです。
不信任案に賛成した理由は?
今回舛添都知事が辞任したのは、都議会議員が不信任案を出してきたことが理由となっています。
では、都議会議員の方々はどういった理由で舛添都知事を辞めさせる考えに至ったのでしょうか?恐らく次の理由によるものだと思われます。
(ア)公費を違法ではないが不適切に使用しており、都知事としてふさわしくない
(イ)参議院選挙で自分が属する政党に勝ってもらうためには、選挙前に知事を辞職させ、自分が所属する政党に対する国民からの批判を避ける必要がある
(ア)について
これは一理あります。しかし違法であれば即辞任だと思いますが、違法でないならば話は変わってきます。都知事が公費の無駄遣いをしたことが問題とされていたため、知事を辞めさせるべきかどうかはどれだけ公費を節約できるかといった観点が重要になってきます。
これだけのバッシングを受ければ、周囲の目も厳しくなります。そうすると、舛添氏が続投したとしても今後も公費を無駄遣いし続ける可能性はかなり低いと考えられます。つまり、舛添氏が続投しても、公費を節約できると考えられます。
知事としてふさわしいかどうかというと、お金の問題以外に仕事ができるのかどうかという観点もあります。この観点では今回全く議論されている感じではなかったため、恐らく舛添氏は知事の仕事をこなす能力については問題がなかったと推測されます。
また、都民の感情という観点では、リコールで知事を辞めさせることが出来るため、都議会議員が都民の感情を理由として知事を辞めさせるのは道理にかなっていないと考えられます。
(イ)について
(イ)についてはどうでしょうか?これは都民からすると関係のない話です。都議会議員達にとってはメリットのあることだと思われますが、都民からすれば、参議院選挙でどの政党が議席を伸ばすのかという点と、都知事が辞めるべきかどうかは全く別の議論です。
結局、(ア)も(イ)も都議会議員が都知事を辞職させた理由としては成り立たないことになります。
現職の都議会議員の方々には、なぜ知事を辞めさせることに賛成したのかその理由をお伺いしたいです。そして、マスコミの方々にお願いしたいのは、都議会議員の方々が述べた理由を一つの記事にまとめてもらいたいと思います。
この記事は大変意義のあるものになると思います。というのも、政治家が選挙に勝つために多くの税金が投じられ、税金が無駄遣いされているということを分かりやすく説明できる事例になるからです。
誰が選挙費用を負担すべきか?
既に舛添氏が都知事を辞任したため、都知事選挙をせざるを得なくなりました。では誰がこの50億円の選挙費用を負担すべきなのでしょうか?
この投稿の冒頭で述べましたが、(1)辞任することになった責任を負っている人、または、(2)辞任することでメリットを享受できる人、が本来費用を負担すべきだと考えられます。
(1)辞任することになった責任を負っている人は誰か?
それは、舛添都知事は当然責任を負っていますが、私的流用を見過ごした人、都知事を選んだ都民、も責任を負うと考えられます。
公費の無駄遣いを見過ごした人は、都議会議員なのかそれとも経費のチェック係がいるのかは存じ上げませんが、そういった方々は都知事の辞任に関して責任を負っていると考えられます。
都知事を選んだ都民についてはどうでしょうか?選挙で票を投じたのだから責任を負っているのは当然のように思えますが果たしてそうなのでしょうか?
都知事選挙では各立候補者が政策を掲げます。都民はそういった政策が実行されることに期待して投票をします。舛添氏が公費を無駄遣いするかどうかといった人間性までは判断できないですし、そういった情報もありません。
むしろ、そういった人間性が明るみになった時に都民の声を反映させる手段としてリコールという制度があるのだと私は考えます。つまり、今回の件について都民は舛添氏に票を投じたからと言って、責任を負うべきだとは考えられません。
このように考えると、辞任の責任を負っているのは都知事と経費のチェック係ということになります。
(2)辞任することでメリットを享受できる人は誰か?
それは、知事の責任を追及したことによって参議院選挙で票を集めることが期待される各政党、その政党に属している都議会議員、新しい知事を選ぶことが出来る都民、の3者だと思います。
誰が費用負担するのが妥当か?
(1)、(2)で費用を負担すべきなのは、①舛添元都知事、②経費チェック係、③各政党、④都議会議員、⑤都民の5者を挙げました。
①舛添元知事ですが、無休で2年働くという申し出をしていたことから、多額の選挙費用を負担させることは道理に合わないと考えられます。とはいっても、公費を違法ではないが不適切に使用していたため、それに見合う金額を支払わない限りは、辞任したとしても都民は納得しないと考えられます。
②経費チェック係は、仮に都の職員の方であった場合、都の人事評価制度に従って処分される程度の話だと考えられます (詳細は省きますが、マネジメントの基本として権限と責任を一致させるというのがこの結論になる理由です)。
③各政党ですが、辞任騒動の当事者ではないため、都知事の辞任によりメリットを受けるものの、それだけを理由に費用負担するのは道理にかないません。しかし、各都議会議員にそれぞれの政党が辞任にしむけるよう働きかけていた事実があるのならば、各政党も一連の騒動の当事者になるため、選挙費用を負担すべきです。
④都議会議員ですが、不適切な知事だと分かったときに不信任案を提出する制度は、都議会を健全に保つのに必要な制度です。
しかし、今回不信任案が出された理由は、参議院選挙で票を獲得するためだと推測されます。
そこで、各都議会議員がどういった理由で不信任案に賛成したのかによって費用を負担させるかどうかを判断すべきだと考えます。この理由から、25億円の税金を追加で使って知事選挙をするのが合理的な理由を各議員は開示する義務があると考えます。
参議院選挙で勝つことが目的であるならば、それは都民ではなく議員個人にとってメリットのある話なので、相応の選挙費用を個人で負担するのが道理にかなっていると考えられます。
⑤都民ですが、リコールという手段があったのにもかかわらず都議会議員による不信任案により都知事が辞任したため、都民が費用を負担する(税金で賄う)というのは道理に合わないと思われます。
今回の辞任騒動は特殊なケース
舛添氏の辞任騒動は、参議院選と重なっていたというかなり特殊な要因も絡んでいると考えられます。参議院選が重なっていなければ、国会議員からの圧力が都議会議員にそれほどかかるとも思えないですし、その場合は都民の考え方はリコールされるかどうかで判断しようという動きをしていたのではないかと私は考えます。
政治家が税金の無駄遣いをしている分かりやすい事例
私がこの投稿を書いた一番の目的は、政治家がどれだけ税金の無駄遣いに無頓着なのかを理解する良い例だと思ったからです。マスコミの方々には是非この論点で記事を書いていただきたいと思います。
それをきっかけとして、税金の無駄遣いが今後少しでも減ることを願ってやみません。