解散総選挙の費用は誰が負担すべきか?
2017/03/09
日本では国会議員が任期を全うせず、解散総選挙をするという状況をよく見かけます。
2016年度では年が明けた1月頃に解散総選挙をするのではという観測報道を見かけるようになりました。
解散総選挙には約700億円のお金がかかると言われています。そして、その費用には税金が充てられています。
これは税金の無駄遣いなのではないかと世の中に問いかけるウェブサイトを自称小学4年生が作成したという話を覚えているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
結局、このウェブサイトは大学生が作成したということが発覚し、非難を浴びる結果となりました。
この投稿では、このウェブサイトがなぜ非難されていたのかについて触れ、解散総選挙にかかる費用を誰が負担するのが本来あるべき姿なのかを考えていきたいと思います。
目次
どうして解散するんですか?
自称小学4年生が作成したというウェブサイト「どうして解散するんですか?」では、以下の様な疑問を投げかけていました。
しつもんです。
ぼくにはさっぱり分かりません。あべそーりはテレビで「みんなに問い直すための解散だ」って言っていたけど、もんだいは一体なに?
たしか議員さんの数が多いのが問題だってパパが言ってた。
でも本当に減らされちゃうのは学校の先生みたい。
渡辺先生だいじょうぶかなあ。やっぱり議員さんってエライんだ。
あとさ、アベノミクスっていうやつで、国のお金を増やすって言ってたのに、ぼくのおこづかいは増えてないよ。パパもママも財布の心配ばかりで、大好きな焼き肉も食べにいけない。でも、1回で700億円かかる選挙は簡単にできるんだよなぁ。ねぇ、だれのお金なの?
ねぇねぇだれか教えてよ。あべそーり、政治家さん、テレビや新聞のみなさん。
約束って守らなくていいの?ムダ遣いしても怒られないの?
どうして解散するんですか?やっぱりこれも秘密なのかなぁ。
どうして解散するんですか?
このサイトは、小学4年生が作ったとうたっていたため、多くの人が興味を示しネットで広く拡散しました。
その後、このサイトを作ったのは当時大学生だった青木大和氏(「NPO法人 僕らの一歩が日本を変える」の代表理事。すでに代表は辞任)であったことが発覚し、多くの批判を受けました。
安倍首相が個人の学生を批判
このサイトの一連の動きを受けて、安倍首相が青木氏個人を公式のツイッターアカウントで次のように批判しています。
小学4年生による投稿と言われ巷で話題となった「どうして解散するんですか?」ですが、今回「NPO法人 僕らの一歩が日本を変える」の代表理事の大学生が小学生になりすまし行っていた事が明らかになりました。批判されにくい子供になりすます最も卑劣な行為だと思います。
選挙目当ての組織的な印象操作ではないでしょうが、選挙は政策を競い合いたいと思います。
安倍首相の意図とは?
一国のトップが大学生個人の活動を批判するのは、かなり異例な話だと思われます。そもそも、安倍首相はなぜこのような異例ともいえる批判をしたのでしょうか。
恐らく、安倍首相が解散総選挙に踏み切ったことについて疑問を投げかけるウェブサイトであったため、解散の意思決定をした安倍首相が所属する自民党が世の中から非難され、自民党が選挙で不利になるようなことをされたため、異例ともいえる首相による大学生の個人批判をしているものと考えられます。
「選挙目当ての組織的な印象操作ではないでしょうが、選挙は政策を競い合いたいと思います」という発言からは、選挙では印象によって誰に投票するのかを決めるのではなく、掲げている政策の中身で判断してほしいと訴えているものと思われます。
つまり、『「誰が言ったのか」が重要なのではなく、「何を言ったのか」が重要だ!』と主張しているように受け取れます。
一方で、「大学生が小学生になりすまし行っていた事が明らかになりました。批判されにくい子供になりすます最も卑劣な行為」とも主張しています。
これは、『「何を言ったのか」が重要なのではなく、「誰が言ったのか」が重要だ!』と主張しているように受け取れます。
安倍首相はこの短いツイッターのコメントの中で、矛盾する発言をしていることになります。
選挙を邪魔されたとして怒っていたことがこの発言の背景だと推測されるため、このような矛盾するコメントにつながってしまったのだと思われます。
そう考えると、あえて穿った見方をすれば、安倍首相の本意は、「政策で判断してもらうことは二の次で、選挙に勝つことが優先させることだ」という解釈もできます。
(私はできる限り客観的な立場で論ずることを目指していますが、解散総選挙の費用は税金の無駄遣いであると考えており、解散総選挙をうたう政党を撲滅したいので、この投稿に限ってはあえて上げ足をとる解釈をしています)
ホームページの意図とは?
安倍首相がツイッターで批判した意図は、自民党が選挙で不利になるようなことをしないで欲しいというものでした。
では、当時大学生だった青木大和氏がこのホームページを作成した意図とは何だったのでしょうか。
ホームページ上で何度も繰り返されている「どうして解散するんですか」というのが一番主張したことだったと思われます。
言い換えると、解散総選挙は税金の無駄遣いをしているということを訴えたかったのではないでしょうか。
Wikipediaによれば、このウェブサイトではボタンを押すと、政治家のTwitterアカウントにスパムメールが送信される設定となっていたとのことです。これが事実であれば、例え自分の主張を通すためであったとしても正当化できない行為だと思われます。
しかし、このウェブサイトが主張している「解散総選挙は税金の無駄遣い」という主張自体は評価できます。
解散総選挙の費用は誰が負担すべきか?
では、700億円かかるといわれている解散総選挙の費用は一体誰が負担すべきなのでしょうか。
基本的な考え方として、この解散総選挙でメリットを受ける人が費用を負担すべきだと言えます。
解散総選挙を政治家が掲げる際、必ず「民意を問うため」という発言がなされます。何かしらの政策を決定する際等に、一度解散をして選挙で国民がどう考えるのかを問うという趣旨です。
700億円をかけて民意を問う必要性はあるのでしょうか?私は無いと考えます。政治家が民意を確認したいのであれば、自費でアンケート調査をすれば済む話です。
解散総選挙をすると、与党としては自分たちの支持率が高いタイミングで選挙に臨めば、議席数を増やす可能性が高まります。これが任期を全うせずに与党が解散総選挙を進める目的であり、メリットだと思われます。
さらに、与党が解散をうたうということは、選挙で選ばれて国会議員になったにもかかわらず、重要な政策決定は自分たちの責任では実行せず、国民に選挙で選ばせることで実施するという責任転嫁にもなっています。
国民にとっては、既に国会議員を選挙で選んでおり民意は反映されています。そのため、あえて国会議員の任期満了前に解散総選挙をするメリットがありません。
このように考えると、解散総選挙は与党にとってメリットのあることであり、費用も解散総選挙に踏み切った与党が負担すべきだというのが筋だと考えられます。
尚、野党は内閣不信任案を提出することで、解散を訴えることが出来ます。これは、与党が与党としてふさわしくなかった場合に野党がそれを正すことが出来るけん制という機能を担っています。国会が正しく機能するために必要な解散であるため、この場合は国民にとってもメリットがあると言えます。
つまり、野党が発端となった解散の場合は、税金で費用を賄うことに一定の合理性があります。
まとめ
以上のように考えると、与党が解散総選挙を主導する場合は、与党がその費用を負担すべきという結論となります。
ただし、700億円の費用を与党が負担できるとは思えないため、例えば選挙費用の10%とか20%等を負担するというやり方もありだと思います。
もしくは、民意を問うというのであれば、与党が全額選挙費用を負担させる制度とし、選挙費用は事前に国民の寄付を募って良いというやり方も考えられます。こうすることで、解散を実施する前に寄付の集まり具合を見て解散に踏み切るかどうかの判断が出来、且つ税金の無駄遣いにもなりません。
次回の解散総選挙では、是非このような議論も世の中で活発になされればと願っています。
尚、選挙制度の抜本的な改革や、税金の無駄遣いを無くすアイデアについては、以下の投稿で紹介しているので興味のある方は是非ご覧ください。