「浮きこぼれ」と「落ちこぼれ」を同時に解決するアイデア

      2017/03/11

皆さんは「浮きこぼれ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、「落ちこぼれ」の対義語として使われている言葉で、優秀すぎて周りから浮いている人のことを指します。

特に、小学校や中学校の義務教育の場で問題となるケースが多いと言われています。

 

この投稿では、日本の教育制度と海外の教育制度の違いについて触れ、浮きこぼれの対策として飛び級制度の是非について考察していきます。

そして、浮きこぼれ問題、落ちこぼれ問題の両方の解決策となり得る新しい教育制度について紹介させていただきます。

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目次

年齢主義と課程主義

学校教育の制度として、生徒がどの学年で学ぶかを決めるのには主に2つの考え方があります。それは年齢主義と課程主義という考え方です。

 

年齢主義とは学校教育の制度の一つで、生徒がどの学年で学ぶかを年齢で決める考え方です。例えば、日本では6歳になれば自動的に小学校に入り、12歳になれば自動的に中学校に入るのが一般的となっています。これが年齢主義に基づいた教育制度の一例です。

 

一方で、課程主義とは生徒がどの学年で学ぶかは、その生徒の能力で決めるという考え方です。そのため、留年させられる場合や、飛び級が認められる場合もあります。

 

 

日本で採用されている制度

日本の義務教育では、ご存知のように年齢主義という考え方が採用されています。ただし、義務教育においても留年等が禁止されていないため、一部課程主義の考え方も取り入れられてはいます。

 

法律上は、学校教育法 第17条1項、2項で飛び級が出来ない旨が定められています。

 

尚、海外では飛び級が認められている国が多くあり、課程主義よりの制度を採用している模様です。文部科学省の調べによれば、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国では、初等・中等教育で飛び級が認められています。

参考: 文部科学省 諸外国の大学入学における要件(概要)

 

浮きこぼれの問題とは

この様に、海外では飛び級制度が採用されている一方で、日本ではそれが認められていません。そのため、いくら優秀な生徒であっても、周りの学生と同じ学年に通い続けることが強制される教育制度となっています。

 

「浮きこぼれ」という言葉を皆さんはご存知でしょうか。これは、高い学力や知性を持っている優秀な生徒が、学校の授業では物足りなさを感じたり、周囲と違うことに疎外感を感じたりすることを言います。いわゆる「落ちこぼれ」の対義語として使われたりもします。

周囲の人と違うために、周りから浮いてしまったり、教師からも疎まれてしまったりするという問題が生じています。

一見すると贅沢な悩みのように思えるかもしれませんが、当の本人にとってみれば精神的にとても辛い状況に追い込まれているということがあります。

 

想像してみてください。仮に皆さんが頭の中身は今のままで、小学1年生の授業を受けさせられたとしたらどうでしょうか?授業中はとても暇で苦痛になると思われます。そして、暇な時間をつぶすために、授業中に自習をすれば、先生に怒られることが予想されます。

友達は小学1年生しかいないので、6歳の子供に会話を合わせ続ける必要があります。

いかがでしょうか?精神的にかなり追いつめられると想像するのは難しくないと思います。

 

ご参考までに、ネット等で述べられている浮きこぼれの体験談をここで紹介させていただきます。

上記のほかにも、次のような体験談もありました。

先生から保護者に対してなされた発言

「社会の授業で、日本国憲法が出てきた時に、ケンポウって知っているか?と言ったら、他の子供は、日本拳法、少林寺拳法、カンフーとか言って笑っていて、○○君も、さすがに知らないだろうと思って、あててみたら、○○君は、先生がケンポウって言ったから、みんなは拳法と勘違いしたんだと思う。日本国憲法って言わないと間違えると思うよ。と言って、前文は国民主権とか、9条は戦争放棄、なんて言ったんです。生意気だと思ったし、話が続けにくくて迷惑です。担任する子供を選べないので、ついていない。」

出典: 家庭教師の探し方 中学受験を突破させた母からの手紙 浮きこぼれ物語 より一部抜粋

 

政府による議論や対応の状況

これまでに落ちこぼれの対応策としては、色々な議論がされているようですが、浮きこぼれについては国策としてあまりケアされていない模様です。

対応策の一つとして飛び級という方法もあるとかと思います。アメリカ、イギリス、中国等の諸外国では飛び級が認められていますし、日本でも飛び級制度があってもおかしくないと思います。

 

実際、自民党が掲げている政策「総合政策集2016 J-ファイル」では、次のように対応策が掲げられています。

「世界トップの教育立国とするため、結果の平等主義から脱却し・・・学校制度の多様化・複線化を図ります。・・・飛び級・高校早期卒業の制度化など、個人の志や能力・適正に応じ、様々な挑戦を可能とする学びの保証システムを実現します。」

 

また、飛び級に関する調査結果としては、次のようなものがあります。

飛び級については、行政で比較的地位の高い層からは3割強の支持があり、当事者である小学生からは2割弱の支持があることが伺えます。

また、浮きこぼれを体験したと思われる層からは、9割を超える支持がされていることが分かります。

 

飛び級制度のメリットとデメリット

これまで述べてきたように、現状の教育制度では浮きこぼれという問題が生じており、その解決策として飛び級制度を導入することに、一定程度の賛成意見があることが分かりました。では、実際に飛び級を日本の教育制度に導入するとどのようなメリットやデメリットがあるのかをここで列挙してみたいと思います。

メリット

  • 他生徒との能力差を意識する必要が無くなり、浮きこぼれている生徒の精神的ストレスが緩和される
  • レベルにあった授業が受けられることで、より深い学習ができる。本人の学習意欲も高まることが期待できる
  • 実力に見合った勉強ができるため、教育の機会均等につながる
  • 学校の進度が遅すぎることによって怠け癖がつき、学習に悪影響を及ぼすことを防げる
  • 新しいクラスメイトと出会えるため、新しい友人を作る機会が増える
  • 現行の画一的な集団授業は生徒のレベルにあった対応が出来ないので非効率。飛び級によってこの問題が緩和される
  • 能力の高い子供が早く高いレベルの学習内容を習得して、早くから日本に貢献することは国としてもメリットとな

デメリット

  • 飛び級制度の安易な導入は過当競争を生み、受験戦争の低年齢化が進むリスクがある
  • 低学年だと本人の意思ではなく親の意思で飛び級させられてしまうリスクがある
  • 飛び級をしたタイミングで学習の空白期間ができてしまう
  • 単教科ではなく全教科の飛び級となってしまうので、苦手科目で苦労したりついていけなくなったりするリスクがある
  • 同級生と離れ離れになってしまうことで、それまで築いてきた友人との付き合いが希薄になってしまうリスクがある
  • 同い年、同年代の友達と仲良くやっていける術を身に付ける機会が損なわれる (ただし、上の世代と仲良くやっていく術を身に付ける機会に恵まれるため、一概にデメリットだとは言えない)
  • 日本的な心情など時間をかけ身に付ける機会が減ってしまう (ただし、飛び級をしても日本的心情を身に付ける機会はいくらでもあるため、一概にデメリットだとは言えない)
  • 努力しなくても勉強ができる人が飛び級をした場合、その後努力が必要になった時に勉強についていけずに落ちこぼれる人が出てくるリスクがある
  • 下の子が兄や姉の学年よりも上に行ってしまった場合、兄や姉が精神的なショックを受けるリスクがある
  • 飛び級を受け入れる社会制度が無いため、コミュニケーション重視(年功序列)の日本社会で、飛び級した生徒の能力を生かせるのかどうかが不透明
  • 飛び級が出来る生徒は理解のスピードが速いため、単純に上の学年に行ってもやはり周りは理解が遅く、浮きこぼれの根本的な解決にはならない

 

新しい教育制度

このようにメリットデメリットを挙げてみると、単純に飛び級制度を導入することで、浮きこぼれの問題を解決できる訳ではなさそうだということが言えると思います。

そこで、私は新しい教育制度を提案させて頂きます。それは、授業に動画を活用するという方法です。国語や数学といった授業は、各学生が自分の進捗にあった授業の動画を各々が見て勉強し、体育や音楽といった授業はこれまでと同様に行うというアイデアです。

簡単に言うと、スタディサプリ(旧受験サプリ)やカーンアカデミーの義務教育版を作るというアイデアです。

 

このアイデアは、以下の投稿で詳細に紹介していますので、興味のある方は是非ご覧ください。

理想的な教育制度とは?

さらに、受験戦争を緩和させるアイデアも別の投稿で紹介していますので、こちらもあわせてご覧ください。

東大から入試がなくなる日

 

この方法を活用すれば、それぞれの生徒にあった授業が受けられるため、浮きこぼれの問題だけでなく、落ちこぼれの問題も解決が出来ます。

さらに良いことに、お金をかけなくても進んだ勉強ができるため、親の経済力による学力格差を抑制する効果も期待できます。つまり、貧困の連鎖を防ぐ効果があります。

それに加えて、長期的には教師の人員を減らすことが出来るため、税金も節約出来る効果が期待できます。

この制度を実行するためにハードルとなるものをあえて挙げるとすれば、最初にこの制度を導入する際のシステム構築にかかる費用や、動画制作にかかる費用です。

システム構築費用については、現代社会はネット環境が充実しているのでそれほど高いハードルでは無いと予想しています。

動画制作については、以下の投稿で解決するアイデア紹介していますので、興味のある方は是非ご覧ください。

税金を使わずに理想的な教育制度を導入するアイデア

 

最後に

官僚の方へ

恐らく、官僚の方々は子供のころに学校の授業に物足りなさを感じた方が殆どだと思います。同じ気持ちを未来のある子供たちにさせないためにも、そして子供たちの無限の可能性をさらに引き出すためにも、是非この動画を活用した教育制度への移行へ向けた対応をお願いします。

 

浮きこぼれで苦しい思いをしている方へ

皆さんの様な苦しみを感じている人は、実は世の中に沢山います。数年我慢すれば解消される問題ですが、どうしても学校の授業が退屈で時間がもったいないと感じていて、数年間も我慢が出来ないのであれば、いくつか方法があるので試してみてはいかがでしょうか。

例えば、授業中に自由に自習させてもらえるように親から先生にひとこと言ってもらう方法があります。ここで大事なことは、皆さんが苦しんでいることをきちんと伝えてもらうことです。先生からしてみると、「生意気」だとか「先生のことを馬鹿にしているのか」とかとらえられかねません。そして、先生からの理解が得られれば、授業中に心置きなく自習が出来るようになり、少しは皆さんの苦痛が和らぐと思います。

この他には、保健室に登校するという方法もあります。体育や音楽等の授業だけ参加して、他の時間は保健室で自習するというのもありではないでしょうか。

 

1日はたったの24時間しかありません。その内、6時間くらいが睡眠にとられてしまうので、勉強できる時間はせいぜい18時間しかありません。この貴重な18時間のうち、半分の約9時間は学校に取られています。1日9時間を無駄にしていた生活を改善できれば、偏差値を20や30上げることもできるかもしれません。好きな科目の勉強をどんどんすすめて、小学校や中学校を卒業するころには高校3年までの数学を終わらせることもできるかもしれません。あるいは、中学校を卒業するころには海外の大学に奨学金をもらって入学できるような成績が取れているかもしれません。

人生の貴重な時間を無駄にしないためにも、是非、親に一度相談してみることをお勧めします。

 

教育者の方へ

公立の小学校や中学校で教鞭をとられている先生方は、クラスを成績別に分けることが出来ず、全ての学生のレベルに応じた授業が出来ないのは当然だと思います。

ということは、授業が簡単すぎて苦しんでいる生徒が当然いることも理解してあげてください。そういった子供たちが授業中に自習をしていたら、怒るのではなく勉強に対する熱意を褒めてあげてください。

それが、周りの子供たちにとっても良い刺激になりますし、浮きこぼれている生徒がもっと勉強を頑張る原動力にもなります。

それが本来あるべき教育の姿ではないでしょうか。

 

保護者の方々へ

公立の小学校や中学校の授業は、平均的な学力の子に合わせせざるを得ない制度になっています。ということは、授業が物足りないと感じている子供は沢山いることが予想されます。皆さんのお子さんも浮きこぼれを感じている可能性は大いにあります。

もし、自分の子供から学校の授業が簡単すぎてつまらないという相談を受けたら、賢い子だと喜ぶだけでなく、苦しんでいないか真剣に声を聞いてあげてください。それによって、将来の可能性を飛躍的に伸ばすことにもつながると思います。

 

 - 教育

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