民主主義の根幹を揺さぶるトランプ大統領

   

2017年2月24日、ショーン・スパイサー米大統領報道官はホワイトハウスの定例記者会見で、政権に批判的な報道をしたCNNやニューヨークタイムズ、ハフィントンポスト等の報道機関による参加を拒否しました。

尚、AP通信やタイム誌は参加を許可されましたが、このホワイトハウスによるマスコミに対する対応に抗議するため参加を拒否したとのことです(注1)。

 

トランプ大統領はこれまで多くの差別的な発言や行動をしてきました。

大統領選挙中には、「すべてのイスラム教徒の入国を禁止すべき」とか、「メキシコとの国境に万里の長城を建設し、メキシコにその費用を払わせる」といった発言をしてきました。(参考: 民主主義の限界!トランプ氏の躍進と衰退)

大統領に就任してからは大統領発令を二度も発令し、イスラム圏の国々からの入国を一時的に制限することも試みています(注2)。

 

ここで、留意すべきことはトランプ大統領はこれまで違法なことをしていないということです。差別的な発言は沢山してきていますが、アメリカの選挙制度に則り大統領に就任しています。大統領令の発動についても、大統領に与えられている権限を行使しているに過ぎません。

(大統領令の内容が合衆国憲法に違反しているという主張がありますが、それは内容にについて違法であるかの議論であり、大統領令を発動する行為自体はトランプ氏が持っている権限だと考えられます。)

 

今回の報道機関の締め出しについても恐らく違法性を問うことは出来ないと思いますが、このように政権に批判的なマスコミを締め出す権限を政府が持っていて良いのでしょうか?

 

民主主義国家では、政府が間違った方向に暴走した場合、国民による選挙権等の行使でそれを抑制できる仕組みが取られています。そして、間違った方向へ向けて暴走しているかどうかの判断材料は、その多くを報道機関からの情報に頼らざるを得ません。このような重要な役割を担っている報道機関に対して一次情報の提供を政府が拒むことは、民主主義の根幹を揺るがしかねない行為です。

民主主義が根付いているアメリカでこのような事態が発生したことに私は大変驚いているとともに、政府として説明責任を果たすことの重要性を私たちはあらためて認識しておく必要があると思います。

 

日本においても透明な情報開示が十分なのか、取材する権利が制度として担保されているのか気になるところです。例えば、村田蓮舫氏の二重国籍問題においても、蓮舫議員は国民に対して戸籍謄本の開示を拒否し、証拠に基づいた説明責任を逃れている状況が続いています。(参考: 村田蓮舫議員の二重国籍問題に関する説明責任と、推薦人が果たすべき責任)

 

機会があれば日本における取材する権利や開示制度がどうなっているのかについても別の投稿で触れていきたいと思います。

 

注1: 出典 日本経済新聞 トランプ政権、記者懇談からCNNなどを締め出し(2017年2月25日)他

注2: 出典 日本経済新聞 トランプ氏が新大統領令 入国制限の条件緩和(2017年3月7日)他

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