日本銀行の仕組み ~ハイパーインフレについて~

      2018/01/13

この投稿では、世の中に出回っているお金の量と物価の関係について説明し、ハイパーインフレのリスクがどの程度あるのか数字を使って説明したいと思います。

結論を先に言うと、日本の物価は最大で1.7倍になると試算でき、ハイパーインフレは理論上起こり得ないと思われます。

 

物価とお金が出回っている量の関係

もしも皆さんが持っている貯金が2倍になったら、財布のひもが緩くなるのではないかと思います。

同様に、みんなの貯金が2倍になれば、みんなの財布のひもが緩くなるということになります。そうすると、ものの値段を上げても買ってくれる人がいるので、物価が上がっていくことが想定されます。

 

このような「世の中に出回っているお金の量と物価の関係」を表した式に、「フィッシャーの交換方程式」というものがあります。これは、次のような式が成り立つというものです。

お金が出回っている量×お金が使われる回数 = 価格×取引量

 

この式は、お金が出回っている量と価格(物価)は比例の関係にあるということを意味しています。こういった考え方を「貨幣数量説」と言います。このことを具体例を使って説明してみます。

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フィッシャーの交換方程式とは(具体例)

Aさんはおにぎりを1個300円で販売しています。その年、おにぎりを200個作り完売しました。このとき、売上は300円×200個=60,000円となります。

ここで、世の中に存在するお金は500円玉が10枚しかなかったとします。そうすると、500円玉は一枚当たり12回使われたことになります。

60,000円÷(500円玉×10枚)=12回

 

これをフィッシャーの交換方程式に当てはめると次のようになります。

お金が出回っている量×お金が使われる回数 = 価格×取引量

5,000円×12回=300円×200個

 

この式の左側はお金を使った総量なので、「全部でいくら買ったか」を意味しています。一方、この式の右側はおにぎりを「全部でいくら売ったか」を表しています。

つまり、フィッシャーの交換方程式は、「買った金額=売った金額」という当たり前のことを表しているにすぎません。

 

さて、ここで政府が500円玉を20枚新たに作って、世の中にばらまいたとします。すると、おにぎりの値段はどうなるでしょうか?

おにぎりの需要が急激に変わるわけではないので、200個作って売るということは変わらないと思われます。さらに、お金が使われる回数も急激に変わることは想定されません。そうすると、お金の量が増えることでおにぎりの値段が上がるということになります。

これを先ほどの式で表すと次のようになります。500円玉が20枚増えて30枚となったので、お金が出回っている量は15,000円です。そのため、

15,000円×12回=900円×200個

となります。

 

つまり、おにぎりの値段が300円から900円と3倍になります。

 

 

フィッシャーの交換方程式とは(専門用語での説明)

フィッシャーの交換方程式は専門用語を使って表すと、次のような式となります。

 

M×V = P×T

M お金が出回っている量。「マネーサプライ」、「マネーストック」、「貨幣の量」といった呼び方をする
V お金が使われる回数。「貨幣の流通速度」という呼び方をする
P 価格(物価)
T 取引量

 

先ほどの例では、V(貨幣の流通速度)やT(取引量)はそれほど急激に変わるものではないので、M(マネーストック)とP(物価)は比例の関係にあるということを表しています。

 

マネーストックとは

世の中に出回っているお金の量のことをマネーストックと呼びます。

マネーストックは色々な定義の仕方があり、日本銀行では次のような定義で毎月データを公表しています。

M1 現金通貨+預金通貨
M2 現金通貨+国内銀行等に預けられた預金(ただし、ゆうちょ銀行は除く)
M3 M1+定期預金+据置貯金+定期積金+外貨預金+CD(譲渡性預金)
広義流動性 M3+金銭の信託+投資信託+金融債+銀行発行普通社債+金融機関発行CP+国債+外債

出典: 日本銀行ウェブサイト「マネーストックの概要」

 

2016年9月末時点では、マネーストックはそれぞれ以下の通りです。

M1 668兆円
M2 943兆円
M3 1,265兆円
広義流動性 1,654兆円

出典: 日本銀行ウェブサイト「マネーストック速報2016年9月」

 

 

通貨発行益で全ての国債を買い取った場合におけるインフレの影響

先ほどはおにぎりの例を使ってマネーストックと物価の関係を説明しました。では、これを今の日本の状況に当てはめてみるとどうなるのでしょうか?

 

日本銀行は国債を大量に買い進めており、そのかわりにお金を大量に発行しています。お金を大量に発行しているということは、インフレ(物価の上昇)が起こっていることなります。

最近では、良く「ハイパーインフレ」という言葉を耳にすることが多くなったと思います。これは、急激な物価上昇が起こるという意味です。

では、仮に日本銀行が残りの国債を全て通貨発行により購入した場合、インフレの影響はどの程度あるのでしょうか。ここで試算してみたいと思います。

 

尚、インフレ税や通貨発行益については以下の投稿で説明しているので、よろしければこちらをご覧ください。

 

日本銀行の仕組み ~インフレ税について~

日本銀行の仕組み ~通貨発行益について~

 

 

日本国債の発行残高は、2016年3月末時点で、約800兆円あります。

このうち、日本銀行が保有している国債は約350兆円なので、残りは450兆円あります。

これをすべて日本銀行が買い取った場合、物価への影響は次のように計算されます。

 

マネーストックをM1とした場合:

    (668兆円+450兆円)÷668兆円=1.7倍

マネーストックを広義流動性とした場合:

    (1,654兆円+450兆円)÷1,654兆円=1.3倍

 

つまり、日銀が国債を全部買ってしまった場合、物価への影響は少なく見積もって1.3倍であり、大きく見積もると1.7倍になると試算されます。

 

このことは、皆さんの貯金が少なく見積もって21%減少し、多く見積もると40%減少することを意味します。

 

この投稿で伝えたい事

世の中には、「ハイパーインフレがおこり、日本の経済が破たんする」や、「ハイパーインフレが起こり、物価が今の何十倍にもなり貯金がなくなってしまう」といったことをうたい、人々の不安を煽って商売をしているものを多く見かけます。

ハイパーインフレは、理論値に関係なく人々が心配すればするほど起きる可能性が高まります。なぜなら、人々の不安が為替や金利に影響してしまうからです。

この投稿を読んでくださった方々には、「物価上昇(インフレ)は最大で1.7倍までしか起こらない」ということが、論理的に計算されることを心に留めておいて頂きたいです。より多くの人がこのことを理解していると、ハイパーインフレは起きません。

 

尚、日銀が行っている国債の大量購入は増税の一種であり、国会で決議しなくて良い増税の抜け道として活用できる仕組みになっています。詳しくは以下の投稿をご覧ください。

日本銀行の仕組み ~増税の抜け道としての通貨発行~

 

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 - 経済