一票の格差よりも深刻な世代間格差の問題点と解決策
2017/03/09
解散総選挙の話が報じられるようになると、必ず一票の格差についても議論に上がってきます。
この投稿では、一票の格差よりも大きな問題を孕んでいる世代間格差について触れ、その解決策や留意点について紹介させていただきます。
目次
現在の選挙制度の欠点「シルバー民主主義」
高齢化社会が進んできた日本では、世代間格差の問題が指摘されるようになりました。高齢者向けのばらまき政策は国会で通りやすい一方で、若い世代から必要とされている保育園の充実等は国会の支持を得られ辛い状況が見受けられます。
例えば、2016年1月に「年金生活者等支援臨時福祉給付金」という制度が発表されました。これは高齢者に3万円を支給するという制度です。そして、ほぼ同じ時期に「子育て世帯臨時特例給付金」が廃止されました。これは、中学生までの子供一人に対して3,000円支給するという制度です。つまり、子育て世帯への支援を高齢者の支援に振り替えるという政策を実施しています。
これからの日本を背負っていく若い世代への支援を減らし、高齢者への配分を増やすことは、国の方針として正しい選択なのでしょうか?
尚、高齢者優遇の弊害については別の投稿で詳しく述べているので、以下のリンクをご覧ください。
新しい選挙制度のアイデア
こういった事態の解決策として、過去の投稿で若い世代に多くの投票権を与えるというアイデアを紹介いたしました。
このアイデアは、ざっくり言うと若い人に多くの投票権を与えるというものです。平均的な余命に応じて投票権を与えるということを基本的な考え方に置いています。
日本人の平均寿命は大体80歳くらいなので、20歳の人は60票を投じる権利を与え、50歳の人は30票を投じる権利を与えるといった具合です。
このように若い人に多くの投票権を与えることで、若者の意見が日本の政治に強く反映されるようになります。
実務面の対応の負荷が重くなってしまう点や、投票権の差をあまり大きくしすぎると別の弊害が出てしまう点を考慮して、10年単位でひとくくりにする方法が良いのではないかと思います。例えば20代は5票、30代は4票、40代は3票、50代は2票、60歳以上は1票といった具合です。
この制度は平均的な余命の観点で平等と言えるため、国民を平等に扱っているというとらえ方が出来ると思われます。
新しい選挙制度のメリット
多くの若者は今後この日本で何十年も生活をしていきます。もちろん、自分たちが老人になってもこの日本で生活をしていくことになります。
そうすると、短期的な政策だけでなく、自分たちの老後の生活が成り立つような長期的視点になった政策を支持するインセンティブが働きます。
例えば、若い世代に負担を先送りする国債の増発は抑制されるようになると思われます。
シルバー民主主義を解決する別のアイデア「ドメイン投票方式」
若い世代に多くの投票権を与える方法の一つとして、ドメイン投票方式というものがあります。これは、親に未成年の子供の分の投票権を持たせるという制度です。
例えば、二人の子供を持つ親には、親自身の投票権も含め3票を投じられるというものです。
この方式は人口学者のポール・ドメイン氏(Paul Demeny)によって1986年に提唱されました。ドメイン氏がこの方法を提唱した理由として、の「政治システムはもっと若い世代の関心に敏感でなければならない」という考え方があます。
尚、日本では九州大学の青木玲子氏などがこのドメイン投票方式を支持しているそうです。
新しい選挙制度のデメリット 「リアルAKB総選挙」
この新しいアイデアにもデメリットが想定されます。過去の投稿で指摘し漏れていた点があったので、ここで紹介しておきます。
若者に多くの投票権を与えすぎると、芸能人のような人気が売りの人が政治に参加する可能性が高まる点がデメリットとして考えられます。
本来は「政治家としての資質」で選挙に選ばれるべきなのですが、それとは無関係である「芸能人としての人気」で票を集めてしまうことが懸念されます。
例えば、国会議員のほとんどがAKBやSKEといったアイドルグループで埋め尽くされてしまうリスクがあります。AKBメンバーが国会議員の議席を奪い合う「リアルAKB総選挙」になってしまう笑えない事態も起こりかねません。
以上のようなデメリットが考えられますが、やはりメリットの方が計り知れないものがあるため、私としては若者に投票権を多く与える制度を導入してほしいと考えています。