痴漢冤罪の撲滅と鉄道会社の社会的使命

   

他の犯罪と比べて、痴漢(冤罪)はとても特殊な犯罪だと言えます。

傷害、窃盗、詐欺といった犯罪は日ごろの交友関係が全うであれば、容疑者に間違われるリスクは限りなくゼロにすることが出来ます。つまり、自分が気を付けておけば冤罪被害に合わないようにすることが出来ると言えます。

一方で、痴漢冤罪については、いくら自分が気を付けていても冤罪被害者になり得るという特徴があります。

首都圏は多くの人口を抱えており、通勤や通学で満員電車に乗らざるを得ません。痴漢冤罪を避けるために早朝の電車を選んだとしても、多くの人が同じような行動に出れば、結局早朝の電車であっても混雑してしまう状況が生じます。つまり、満員電車を避ける(=痴漢冤罪を避ける)ことは、個人が気を付けても解決できる問題ではなく、社会全体で解決すべき問題と言えます。

 

そこで、この投稿では、痴漢冤罪を防ぐ以下アイデアを提案しています。

  • 電車内に監視カメラを設置する
  • 鉄道会社が本腰を入れて監視カメラ設置に取り組ませるべく、株主総会で質問する

 

もちろん、痴漢冤罪だけでなく、痴漢そのものも大きな問題です。痴漢の被害にあった人で、精神的苦痛から電車に乗れなくなるような場合もあろうかと思います。

上記アイデアは痴漢防止も兼ねており、実行に移さない理由は無いと私は考えます。以下順を追って説明していきます。

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目次

冤罪防止の選択肢

電車内の痴漢冤罪を防止する主体/方法としては、以下のものが考えられます。

  1. 加害者
  2. 加害者と間違われる人
  3. 被害者
  4. 法律の改善
  5. 警察の内規の改善
  6. 鉄道会社(車両の改善、内規や体制の改善)

 

1~6の中で、実効性があるのは「6. 鉄道会社」であると私は考えます。以下、順を追って各主体が痴漢冤罪を防げる見込みについて検討していきます。

 

「1. 加害者」が痴漢冤罪を減らす方法

そもそも、日常的に痴漢をしている人が痴漢をしなければ、痴漢冤罪の数も劇的に減らすことが可能です。しかし、痴漢の加害者自身が冤罪撲滅に向けた動きを自主的に行うことは期待できません。

 

「2. 加害者と間違われる人」が痴漢冤罪を減らす方法

痴漢冤罪に巻き込まれないようにする方法としては、「早い時間帯の電車に乗ることで混雑を避ける」、「電車内では両手でつり革を持ち勘違いされないようにする」、「電車内では可能な限り異性の後ろに立たない様に気を付ける」等の対策があります。しかし、どの対策を取るにせよ被害者が「痴漢です」と主張すれば、警察は被害者の発言を優先するというのが現実であり、この問題の根本的な解決にはなり得ません。

 

「3. 被害者」が痴漢冤罪を減らす方法

痴漢の被害者に冤罪を防ぐインセンティブは働かないため、被害者から痴漢冤罪撲滅へアプローチすることは効果的な対策とは思えません。

しかし、あるブログで痴漢被害者にとってもメリットのある痴漢防止策(痴漢冤罪防止策)を提案しているので、ここでも紹介させていただきます。

それは、電車内で痴漢かなと思った際に「何かご用ですか?」と痴漢容疑者に対して問いかけるという方法です。「この人痴漢です!」と言ってしまった場合、それが勘違いだったら相手の人生を狂わせ、将来恨まれるリスクがあります。「何かご用ですか?」と容疑者に問いかければ、冤罪による逆恨みリスクも減らせるし、本当の痴漢であっても、けん制することが出来ます。
(出典: 「痴漢冤罪をなくす方法について考えてみた話」 すこしふしぎ氏 はてなブログ 2017年5月21日)

 

 

「4. 法律の改善」により痴漢冤罪を減らす方法

これはハードルが高く他の選択肢と比べて実現可能性が低いと思われます。

 

日本の刑法は疑わしきは罰せずという原則があります。しかし、痴漢については被害者が被害にあったと証明すべきところを、容疑者が痴漢をしていないことを証明しなければならない制度となっています。

より正確に言うと、裁判では被害者の証言を元に容疑者が痴漢をしたことが主張されます。その主張を覆すために痴漢冤罪の被害者は痴漢をしていないことを証明しなければなりません。やっていないことを証明することはとても難しく、「悪魔の証明」という言い方をする人もいます。

 

さらに、会社勤めの方々が痴漢に疑われた場合、容疑を否認し続けると警察に何日間も拘束されるため、仕事に支障をきたしてしまいます。つまり、冤罪であっても容疑を認めざるを得ないという仕組みとなっています

このような現状であるため、多くの冤罪被害者はやってもいない痴漢の罪を認め示談していることと思われます。

法律の改善を訴える人は、このような冤罪被害者であり、法律の理不尽さを経験した方々だと言えます。

しかし、世の中的には痴漢を認めたという烙印を押された人が法律の改善を訴えても、世間から共感を得辛いということが想定されます。

つまり、痴漢冤罪を防ぐ法律の改善は、それに本気で取り組める立場にある人が限られているという構造となっており、改善のハードルはとても高いと思われます。

 

 

「5. 警察の内規の改善」により痴漢冤罪を減らす方法

警察の立場からすると、被害者が痴漢を訴えて協力を求めてくれば、それに対応するのが仕事です。

警察の仕事は犯罪を防ぐことであり、容疑者を逮捕して似たような犯罪が発生することを防ぐ役割を担っています。

警察にしっかり取り締まりをしてもらうためにも、痴漢冤罪が生じた際に警察にペナルティーを科すことは社会全体の犯罪抑制効果を天秤にかけると、得策では無いと言えます。

例えば、痴漢容疑で逮捕された方が、その後裁判で無罪を勝ち取った際に、逮捕・捜査をした警察官を訴えるということは得策ではありません。もし、そのようなことを認めてしまえば、警察官は容疑者を逮捕するのに及び腰になってしまい、本当の犯罪者を野放しにしてしまうことになりかねません。

(当然、捜査方法の見直しや改善は当然すべきです。)

 

以上のように考えると、警察には担っている社会的役割から、冤罪を減らすインセンティブが働かないと言えます。つまり、警察の内規を変えて冤罪を減らす方法は効果的でないと言えます。

 

警察としては、とりあえず被害者の証言を元に容疑者を逮捕するという実務が取られている模様です。

ご参考までに、以下の様な刑事に対するインタビュー記事を紹介いたします。

 

【竹内】被害者の証言以外に客観証拠は?

【刑事】路上なら防犯カメラを集めるのだけど、電車の中にはない。だから手のひらの微物鑑定をする。繊維などの付着物を見るんだ。でもその前に、犯行状況の再現で蓋然性が高くて、被害者の証言に信用性が有ると判断すれば、逮捕するのが現実だ。

出典: 【緊急取材】痴漢疑われた男性死亡~刑事に聞く、痴漢捜査の裏側 NEWSの真相 TBS 竹内明 2017年5月16日

 

以下は、冤罪であっても痴漢を認めた方が「損害が少ない」という体験談の記事です。警察による容疑者拘束のフローや実態を理解する参考までに。

 

派出所まで出向いて彼の身柄を受け取ったのだが、釈放されて2人でメシを食いながら、彼は「実はオレはやっていない」と主張する。「完全な冤罪だ」と言うのだが、無罪を主張するとそのまま警察に何日間も(下手すれば何カ月も)拘留されてしまう。彼も仕事があるし、長期間拘留されたら、奥さんにも痴漢容疑で逮捕されたことがバレてしまう。しかし、罪を認めてしまえばすぐに釈放されるし、初犯でそれほど悪質でない場合は(女性からすれば全ての痴漢行為は悪質だろうが、ここでは刑事司法的にという意味)罰金刑で済む場合が多いようだ。

出典: 名門女子高生「痴漢冤罪詐欺グループ」、中年男を狙う巧妙な手口 ダイヤモンド・オンライン 2017年5月30日

 

痴漢に関して警察の内規を改善する取り組みはなされていますが、これは痴漢の被害者を守るための改善であり、痴漢冤罪被害者を減らすという目的では無い様です。以下に参考となる記事を紹介させていただきます。

 

5月下旬、警視庁各署にある文書が配布されたという。タイトルは「卑猥行為事件犯発生時における留意事項について」。

生活安全特別捜査隊から発出されたこの通知は、A4版で10枚、内容は警察官用の「痴漢捜査マニュアル」である。その中身は、冤罪防止のために警察官に慎重な捜査を求める内容だ。

<被害者供述の信用性の有無、誇張や矛盾、勘違いはないか、外に犯人となりうるものはいないか、犯罪と犯人の明白性を十分に吟味する必要がある>

つまり、被害申告を鵜呑みにするのではなく、嘘や勘違いを疑いながら、様々な手段で証拠を集めよという内容だ。

(中略)

だが実際には、この痴漢捜査マニュアルは、あくまでも「無罪判判決を防ぐために捜査を尽くせ」というものであり、冤罪防止ではなく「無罪防止マニュアル」である

出典: 警視庁作成「痴漢捜査マニュアル」その全容 現代ビジネス 2017年6月15日

 

 

「6. 鉄道会社(車両の改善、内規や体制の改善)」により痴漢冤罪を減らす方法

鉄道会社は満員電車という痴漢が出来る「場所」を提供しているため、痴漢を防ぐ義務を負っていると考えられます。当然、痴漢冤罪を防ぐ役割も担うべきです。

つまり、痴漢冤罪を減らす方法として、鉄道会社が主体的に動くことが1~6の方法の中でハードルが低く、実効性があると考えられます。

このことについて、以下詳しく説明していきます。

 

痴漢冤罪防止に関して鉄道会社が置かれている状況

上述の通り、鉄道会社は犯罪(痴漢)の場を提供しているため、その犯罪を防ぐべき立場に有ります。しかし、冤罪被害の抑制については積極的に取り組めない立場にある様です。

東洋経済でこのことを良く説明してくれている記事があるので、ここで紹介いたします。記者が各鉄道会社に痴漢冤罪防止に関する質問をした際の回答が掲載されています。

 

弁護士の知り合いがいない人に、鉄道会社が弁護士を紹介するというアイデアに対する各鉄道会社の回答:

「公式見解を出すには時間がかかります」

「弁護士を紹介するという業務は鉄道会社にはありません。それに、紹介した弁護士をめぐって新たなトラブルになることも考えられます」

 

弁護士の連絡先が記載されたポスターを目につく場所に貼っておくアイデアについての回答:

「冤罪を防ぐという趣旨は理解できるが、加害者(だと疑われている人)をそこまで手厚く処遇する必要があるのか」

「鉄道会社としては、速やかに警察に引き継いで片を付けたいので、わざわざ時間がかかるようなことはしたくない」

「まるっきり可能性がないわけではない。問題が問題なので、どこか1社だけが率先して実施するということはないはず。やるとしたら各社一斉にという形になるのでは?」

 

その他の質問に対する回答:

(複数の鉄道会社からの回答)「冤罪回避の取り組みよりもまず、痴漢行為そのものを防がなければいけない。冤罪回避に取り組んでいると、痴漢対策を放置しているように受け取られかねない

出典: 「痴漢冤罪」は鉄道会社と弁護士が組めば減る 東洋経済2017年5月29日

注: 抜粋した内容が分かるように、一部説明文を追加

 

電車内の痴漢冤罪を防ぐアイデア

電車内に監視カメラを設置すれば、多くの痴漢冤罪を防ぐことが出来るのではないかと思います。

しかし、カメラを車両のどこに設置するのか、何か所設置するのか、録音機能を持たせるのか、等監視カメラを設置すると言っても、色々な方法があります。

満員電車で乗客の手元まで移すのは難しいと考えられるため、本腰を入れて設置方法について議論しなければ、実効性の乏しいものになることが予想されます

上記の通り、鉄道会社とすれば冤罪防止について積極的に取り組めない立ち位置にいます。

では、鉄道会社に痴漢冤罪撲滅に向けて取り組むインセンティブを与えるにはどうすれば良いのでしょうか。

 

 

痴漢冤罪防止に積極的に取り組ませるアイデア

鉄道会社が痴漢被害を減らすために努力すべき理由は、以下の様に説明できると思います。

  • 鉄道会社は満員電車という痴漢を誘発する「場所」を提供している。つまり、犯罪を助長し痴漢の被害者を生み出してしまっている。そのため、この犯罪を抑制し、被害者を守る社会的使命を負っている

 

これと同様に、痴漢冤罪被害を減らすために、鉄道会社が努力すべき理由は以下の様な説明が出来ます。

  • 鉄道会社は満員電車という痴漢を誘発する「場所」を提供している。痴漢する犯罪者が生まれるため、痴漢冤罪の被害者も同時に生み出してしまっている。そのため、痴漢冤罪の被害者を守る社会的使命を負っている

 

痴漢被害者も痴漢冤罪の被害者も、鉄道会社が満員電車という「場所」を世の中に提供しているから発生しています。ある意味で犯罪に「加担」しているので、その犯罪を防止、抑制するために尽力することは当然というロジックです。

 

鉄道会社が本格的に痴漢冤罪防止に向けて取り組むようになるアイデアとして、私たち一人一人が出来るものを2つ提案させていただきます。

 

アイデア① 多くの株を取得し、株主提案をする

鉄道会社の株式を大量に購入し、株主総会で痴漢冤罪に向けて監視カメラ設置等に取り組むことを提案する方法です。しかし、株主提案をするには最低でも300個の議決権が必要なので、上場している首都圏の鉄道会社の場合、数千万円は必要になってきます。

技術的には可能ですが、現実的には難しい方法と言えます。

 

アイデア② 1単元の株を取得し、株主総会で質問する

株主であれば株主総会に出席することが出来ます。株主総会では質疑応答の時間が設けられており、そこで痴漢冤罪の防止に向けた取り組みについて質問をし、鉄道会社の対応を促すというアイデアです。質疑応答の時間は限られているため、挙手をしても絶対発言できるとは限りませんが、前方の席に座り、質疑応答の時間に入ったら真っ先に手をあげれば、質問できる可能性は格段に上がります。

 

1単元の株であれば、数十万円で購入できる場合が多いです。もし、資金的に余裕が無いのであれば、3月末に株主としての権利が確定する時だけ株を保有し、翌日に株を売却すれば殆ど資金負担はありません。

 

痴漢冤罪防止に向けた取り組みに不満を持っている方々は、是非この方法を試してみてはいかがでしょうか。

 

ご参考までに、質問する際の例文を記しておきます。適宜ご活用いただければ幸いです。

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本日は、大変わかりやすいご説明有難うございました。

私は御社の鉄道を日々使わせていただいており、大変お世話になっております。

利用者の立場として、一つお伺いしたいことがあります。痴漢冤罪が発生しないようにする取り組みについてご教示頂けないでしょうか。

昨今、新聞報道等で痴漢冤罪の被害に遭ったというものをしばしば見かけます。私も電車に乗る際は、冤罪被害に遭わないようにとても神経をすり減らしています。

御社は満員電車という痴漢できる場所を提供しているため、その防止に取り組む社会的使命を負っていることと思います。それと同時に、満員電車は痴漢冤罪被害者を生み出しており、その抑制に向けた社会的使命も負っていると言えます。

満員電車で生じる痴漢冤罪被害は、善良な一般市民が社会的信用を失うという状況を作り出していることを意味します。これを防止することは、その原因を作っている御社にとっての社会的使命だと私は考えます。

 

個人的には、痴漢冤罪の被害を抑制するには、車両内に監視カメラを設置することが有効だと考えます。

ご回答の程、宜しくお願い申し上げます。

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尚、東京メトロや都営地下鉄は上場していないため、株主総会で質問するという方法が取れません。東京都と財務省が株主なので、上記とは別のアプローチをとらなければなりません。

いずれにしても、民間企業の方が早い対応が出来るので、上場企業を先に説得するという方法をとれば、公的機関も追随せざるを得なくなると思われます。

 

この考えに共感して下さった方は、是非株主総会に参加してみては如何でしょうか。もしくは、この投稿のアイデアを知人と共有して頂き、世論を形成していくという方法もあると思います。

一日も早く、痴漢冤罪被害が無くなることを願っています。

 

尚、このブログでも既にこのアイデアについて紹介させていただきました。カメラ設置のメリットやデメリット等を説明しているので、興味のある方は是非以下のリンクもご覧ください。

それでもボクはやってない/それだとボクはできません

痴漢冤罪の撲滅に向けた動き

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