築地市場移転問題の決着のつけ方

   

築地市場の豊洲移転の是非を巡って様々な議論がなされており、そもそも何のために議論しているのかすら分かり辛い会議も多く行われている印象です。

しかし、この移転問題の本質はとてもシンプルなのではないかと私は考えます。それは、食を扱う市場を工場の跡地に建設していることだと思います。

私たちが口にする食べ物は、その他の日用品等と違って高い安全性が求められます。それを扱う市場をなぜあえて土壌汚染リスクの高い工場跡地に建設する判断を下したのでしょうか。

この投稿では、築地市場移転問題について、都民や国民から納得が得られる決着のつけ方について私なりの考えをまとめてみました。結論としては、「千葉や神奈川への移転、築地近辺の2か所に分散して移転させるといったすべての選択肢を検討した上で結論を出す」という方法です。

以下、順を追って説明していきます。

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目次

築地市場の移転先の条件

東京都中央卸売市場のウェブサイトによれば、築地市場の移転先に求められるものとして、以下3つの条件が挙げられており、豊洲への移転を結論付けています。

 

新しい市場の移転先の条件

  1. 約40ヘクタールのまとまった敷地が確保できること
  2. 大消費地である都心部の周辺で、輸送時間やコストの観点から高速道路や幹線道路にアクセスしやすい交通条件の良好な位置にあること
  3. 築地がこれまで築き上げた商圏に近く、機能・経営面で継続性が保てる位置にあること

これらの条件をもとに、移転候補地となりうる用地を、都内全域にわたって調べてみましたが、すべての条件を満たす場所は、現在において、豊洲地区以外にありません。

出典: 東京都中央卸売市場 問題解消ブック

 

移転先の代替案

上記3つの条件を踏まえて、私は以下2つの代替案が可能なのでないかと感じました。

代替案① 複数の移転候補地を活用する

移転候補先の条件として約40ヘクタール以上必要ということが東京都中央卸売市場のウェブサイトでは説明されています。この条件を満たすために、築地市場の移転先候補地として挙がっていた地区のうち、晴海地区、有明北地区、中央防波堤内側等の候補地に分散させて移転させるアイデアが考えられます。豊洲という工場跡地に移転させるよりは施設の重複による経済的な非効率はあるものの、2か所に分散させるアイデアの方が食の安全性の観点からましな選択肢ではないかと考えられます。

(ただし、これらの候補地も豊洲と同様な土壌汚染問題を抱えている場合は、この選択肢は有望ではなくなります)

 

代替案② 千葉や神奈川の候補地を活用する

首都圏の消費者に向けた卸売市場ということであれば、千葉や神奈川の候補地も選択肢になり得るのではないかと考えられます。

私が調べた限りでは、これまでに東京都以外の地域が検討されたという資料は見つかりませんでした。上述の通り、東京都は「都内全域にわたって」候補地を調べたと説明しています。

築地市場の移転先として3つの条件が挙げられています。その内、40ヘクタール以上の土地である点と、都心部周辺交通アクセスの良い場所という2つの条件を満たす候補地は、千葉や神奈川でもあるのではないでしょうか。少なくとも、候補地が無いのであれば、それを世の中に対して説明する義務が東京都にはあるはずです。

また、移転先に求められる3つ目の条件として、以下のものが挙げられています。

「築地がこれまで築き上げた商圏に近く、機能・経営面で継続性が保てる位置にあること。都心に集積する小売店・飲食店の食材の確実な品揃えや品不足への速やかな対応。築地が70年以上にわたり築いてきた、顧客との関係やブランドの継承」

この条件を満たすには、千葉や神奈川は移転先の選択肢からは外れます。しかし、この3つ目の条件は本当に必要なのでしょうか。詳細な説明文が少ないため私にはその必要性が理解できませんでした。

「機能・経営面で継続性が保てる位置にあること」についてですが、この意味も良く分かりません。市場で勤務している人々にとって、築地から千葉に場所が移ると通勤時間が多少長くなるかもしれませんが、経営の継続性が保てなくなるレベルなのでしょうか?

「品ぞろえや品不足への速やかな対応」についてですが、通常、飲食店やスーパーの購買担当者が早朝に築地市場に出向き、車やトラックに積んで自社まで持ち帰るという流れだと思われます。

仮に、千葉や神奈川に市場が移った場合、車やトラックで移動する時間が追加で30分~1時間かかる程度の話ではないでしょうか。

また、「顧客との関係やブランド」についても、何を意味していることが理解できません。築地という場所やその近くでないと顧客との関係を維持できないのはどういった意味なのでしょうか?ブランドとは誰に対するブランドであり、それはどういった付加価値に繋がっているのでしょうか?

「築地」という名前が付いた魚だと、他の市場を通じた魚よりも一般消費者が高く買ってくれるということなのでしょうか?もし、この意味なのであれば、そもそも魚は海で採れるものであるため、他の市場を通じて流通転しても魚の根本的な価値は変わりません。

 

東京都が担うべき役割

東京都中央卸売市場は東京都の一部門です。つまり、東京都内にある卸売市場の移転先について、東京都内を主眼として考えるのは、都の立場で考えれば仕方のないことかもしれません。

しかし、東京都が担うべき役割は、都民の生活基盤を整えることだと私は考えます。築地市場の移転先として千葉や神奈川になっても、そこから都民のもとへ魚が流通していくことになり、都民の生活を支えることが出来ます。東京都の仕事は、築地市場の移転先を都内に絞ることではないと私は考えます。

残念ながら、東京都中央卸売市場のウェブサイトを見る限りにおいては、上述の通り「都内全域にわたって調べてみた」と説明されており、千葉や神奈川が検討された痕跡を発見することは出来ませんでした。

 

築地市場移転問題の決着のつけ方

以上述べてきたように、築地市場の移転先は、まずは首都圏全域で候補地を検討するのが筋だと考えます。

その結果、豊洲しか選択肢が無いと言うことであれば、あとはどっちのリスクを受け入れるかという判断をするだけとなります。

つまり、築地市場の老朽化というリスクと、豊洲の土壌汚染というリスクを天秤にかけ、どちらの方がましなのかを判断するということになります(技術的に可能なのであれば、築地の改修という選択肢も比較対象となります)。

 

千葉や神奈川への移転、築地近辺の2か所に分散して移転させるといったすべての選択肢を検討する

消去法で移転先としては豊洲が最適?となる

(技術的に改修が可能なのであれば)築地市場の老朽化リスクと、豊洲の土壌汚染リスクのどちらかを選択

 

過去の責任追及をするのは再発防止に向けた重要なプロセスですし、それを政治利用したいと考える方々も、人気商売である政治家の立場を考えると仕方のないことではあると思います。しかし、食の安全を考えた際はもっと他に優先して議論すべき事項があることを頭の片隅に入れておいて頂きたいと考えます。

 

都民や国民の理解を得るには、すべての選択肢を検討したのかどうかについての説明が不足しています。逆に言うと、すべての選択肢を検討したうえで豊洲への移転しか無いという結論なのであれば、後は土壌汚染対策を現在の技術で可能な限りやっていくということで私たちは納得せざるを得ません。

これまでの発表資料や報道を見る限りでは、他の選択肢が政治的な理由で排除されたという印象を持っていますし、個人的には工場跡地に市場を移してほしく無いと考えています。

 

都知事や東京都が一日も早くなぜ豊洲なのかについての説明責任を果たし、築地市場移転問題の決着をつけ、税金を浪費する状況から抜け出すことを願っています。

 

参考: 築地市場移転について、最適な選択肢をとるには?

 - 政治

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